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共同正犯と中止未遂

~最高裁昭和24年12月17日判決~

 何かをしていて、気が変わることってありますよね。
  犯罪の実行に着手した後、自己の意思に基づいてその行為を中止することを中止犯といい、刑が減軽または免除されます(刑法43条)。しかし、犯罪は一人で行う場合ばかりとは限りません。共犯者がいて、この者がなおも犯罪を続け、結果を生じさせてしまったとき、犯罪から離脱した方の人間は裁判でどのように評価されるのでしょうか?

 被告人Xは、Yと強盗しようと共謀して、A宅に夜間侵入しました。
  YはAに対して刺身包丁を突きつけ、「有り金を皆出せ、1万や2万はあるだろう」と脅し、Xもナイフをもって金銭を要求し、脅迫に加わりました。
  しかしXは、教員職の家だから金はないが、学校の公金が7000円程あるとのAの妻の対応に、「そんな金はいらん」と金銭を受け取りませんでした。Aの妻が箪笥から出した900円に対しても、Xは「そんな金はいらん、俺も困って入ったのだからお前の家も金がないのならそんな金は取らん、お前はこの金が取られたと思って子供の着物か何か買ってやれ」等と答えました。そして、Yに「帰ろう」といって先に屋外に出たのです。
  しかし、Yは900円を取って3分後に屋外に出てきました。帰路、Yが「900円は俺がもらってきた」といったので、XはYが900円奪ってきたことを知りましたが、2人はその金を遊興費に使ってしまいました。
  原審の名古屋高裁は、差し出された900円をYが強取するのを阻止せずに放任し、これをYとともに費消したのであるから、Xは中止未遂とはならず、強盗既遂だとして懲役3年の実刑を言い渡しました。
  弁護人は、Xが、Aから差し出された900円を受け取ることなく、被害者宅から立ち去るべきことをYに対し勧告し、Yの強盗を阻止したものであり、Xに関する限り本件を強盗既遂とするのは酷であって、中止未遂とするのが妥当として上告しました。

 最高裁判所は上告を棄却。
  Xが、Aの妻の差し出した現金900円を受け取ることを断念して、同人方を立ち去ったのだとしても、共謀者であるYが金員を強取することを阻止せず放任した以上、Xのみ中止犯というわけにはいきません。XとしてもYによって遂行された本件強盗既遂の罪責を免れ得ないと考えました。したがって、原審弁護人の中止犯の主張を排斥し、Xに対し本件強盗罪の責任を認めた原審は相当であるとしました。

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