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電車転覆による人の死の責任〔三鷹事件〕

~最高裁昭和30年6月22日大法廷判決~

 線路上しか走らないはずの電車が、線路を外れ、自分に向かってきたら...
  考えただけでも恐ろしい話ですが、実際に起こった事件なのです。

 昭和24年7月15日午後9時23分頃(当時のサマータイム。現在の午後8時23分)、被告人は、国鉄三鷹駅構内の車庫に入庫中の7両編成の無人電車を発進させました。被告人は先の国鉄人員整理で解雇を宣告された人間で、駅出口に設置された一旦停止の標識で脱線させ、電車の入出庫を妨害する計画を立てていました。
  しかし、運転者なしで暴走を始めた電車は、被告人の予想に反して一旦停止の標識を過ぎ、時速60キロを越す猛スピードでホームの車止めに衝突、脱線しました。そして転覆しながらそのままホームや改札、駅前交番を破壊して進み、道路を横切って商店街にまで突っ込む大惨事に。
  この結果、6人が死亡、20人が重軽傷を負いました。

 刑法は、125条1項で、損壊その他の方法により汽車・電車の往来の危険を生じさせる行為を2年以上の有期懲役と規定しています(往来危険罪)。
  さらに、126条3項では、人が現在する汽車・電車を転覆または破壊して、人を死亡させた者を、死刑もしくは無期懲役に処すと示しています(汽車転覆等及び同致死罪)。
  また、127条では、125条の罪を犯した結果、予想外に電車・汽車を転覆・破壊させてしまった場合も、126条と同様に故意犯として扱うとしています(往来危険による汽車転覆等罪)。
  これらは全て、汽車・電車が人々の交通手段に与える影響が大きく、生命・身体・財産に及ぼす危険も甚大だという事情を鑑みたものです。

 これらの規定を用いた今回の事例では、
(1)刑法127条126条と同じ故意犯の扱いをすると定めているが、この126条は126条3項も含む趣旨か。
(2)犯行に使われた電車が無人電車だったことから、126条3項にいう「人」には、車外の人が含まれるか。という点が争われました。

 第1審判決は(1)も(2)も肯定し、刑法127条、126条3項を適用し、被告人を無期懲役に処しました。原審も、第1審判決の法令の適用を是認。量刑についてのみ第1審判決を破棄自判し、被告人を死刑に処しました。
  被告人は、(1)の点は否定されるべきで、原審は127条の解釈適用を誤った違法があり、明文の法律がないのに刑罰を科したものであって、法律がなければ刑罰を加えられないとする憲法31条違反だ、等と主張して上告しました。

 

 最高裁の判断は上告棄却。
(1)の点につき、刑法127条は、125条の罪によって汽車・電車を転覆または破壊させ、人を死亡させた場合には、126条3項の例により処断すべきことを規定したものと判断しました。
 127条は「前条(126条)の例に同じ」と規定するのみで、126条3項を除外せず、また126条1項・2項に限定する旨の規定も置いていないのだから、文理上当然に、126条各項所定の結果が発生した場合には、すべて同条項と同様に処断すべきものとしたのです。

 (2)に関しても、126条3項にいう『人』とは、かならずしも同条1項2項の車中船中に現在した人に限定すべきではないとし、車外の人も含むものと認定しました。

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