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夫婦間の強姦

~広島高裁松江支部昭和62年6月18日判決~

 夫婦の間に強姦なんて成立するの?
タイトルを見てそう感じた方もいらっしゃるでしょう。

 基本的に、暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫する行為は強姦罪にあたります(刑法177条前段)。
  ただ、夫婦には、互いに性交渉を求める権利と、これに応じる義務が存在するのです。
   夫の性交渉の要求に応じる義務が妻にあるならば、妻は夫を拒むことはできず、強姦罪の被害者にはなり得ないとも考えられます。
   では、夫婦関係が破綻している場合はどうでしょう。
   今回の事案では、関係が破綻している夫婦の夫が暴行・脅迫によって妻を姦淫した場合に、強姦罪が成立するかが問題となりました。

 被告人Xは、妻Aに対して度々暴力を振るっており、これに耐えかねて家を出るAを、その都度Xが連れ戻すという状態が続いていました。
  昭和59年9月も、Xの暴力から逃れるため実家に戻っていたA。例のごとく、Xは友人YとともにAの実家へ出向き、家に戻るよう説得しましたが、Aは応じません。
   XとYは強引にAを自動車に乗せ、自宅へ向かいました。その途中、停車した自動車の中で、Xは、Yと共謀のうえ、Aを強姦するという行為に及んだのです。

 1審は、XとY両名に強姦罪の成立を認め、Xを懲役2年10月に、Yを懲役2年に処しました。これに対して弁護人は、

  1. XとAは夫婦で、互いに性交渉を求める権利とこれに応ずる義務があるため、夫が妻に対し、暴行・脅迫を用いて性交渉に及んだとしても、強姦罪は成立せず、暴行・脅迫罪が成立するにとどまる。
  2. 夫が第三者と共同して、妻を輪姦した場合であっても、夫自身は妻との関係上、性交渉を求める権利を有し強姦の主体となり得ない。従犯(実行行為はしないものの、正犯の実行行為を容易にする幇助犯、刑法62条)ないしは暴行罪として処罰されるにとどまる。

と主張しました。
  広島高裁は控訴を棄却。Xを強姦罪の共同正犯とした1審の判断を、正当として支持しました。

 判決はまず、婚姻中夫婦が互いに性交渉を求め、かつこれに応ずべき関係にあることを認めました。しかし、「婚姻中」とは実質的にも婚姻が継続していることを指すのであって、法律上は夫婦であっても、婚姻が破綻して夫婦の実質を失い、名ばかりの夫婦にすぎない場合には、もともと夫婦間に、性交渉に関する権利義務関係はないと判断しました。

 そして、名ばかりの夫婦にすぎない場合には、夫が暴行又は脅迫をもって妻を姦淫したときは強姦罪が成立し、夫と第三者が暴行又は脅迫を用い、共同して妻を輪姦するに及んだときは、夫についても強姦罪の共同正犯が成立するとしました。

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