サイト内検索:

幇助の因果性

~東京高裁平成2年2月21日判決~

 犯罪の実行行為をしていなくたって、その手助けをしたなら罰してもらいたい。
 そんな考えに対応するのが幇助犯の概念です。

 幇助とは、実行行為以外の行為によって、正犯(犯罪の実行行為をした者)の行為を助け、その実現を容易にすることをいいます(刑法62条)。
 幇助したと評価するには、幇助犯と正犯が犯した結果の間に因果関係が必要です。

 そこで今回の事案では、被告人Xの行為と正犯Yの強盗殺人行為に因果関係があるか、Xは幇助犯となるのかが問題となりました。

 主犯である共同被告人Yは、宝石商のAに対して宝石等を多量に購入するなどと働きかけ、Aから数回にわたって宝石類や毛皮などを預かり保管していましたが、これ以上宝石類を持ってこさせるのは難しいと考え、Aを殺して宝石類の返還を免れようと企てました。

 そこで当初、殺害場所にしようと予定したのが、自分の経営する会社事務所ビルの地下室です。
 本件被告人Xは、拳銃音が外部に漏れないよう、地下室入口戸の周囲の隙間等をガムテープで目張りし、換気口を毛布で塞ぐなどの処置を施しました(行為1)。

 しかし、計画は変更され、Yは、仲間の運転する自動車で高速道路を走行中、車内でAを射殺します。同時に、Aが所持していた現金40万円も抜き取ったため、強盗殺人の罪を犯しました。
 この際、Xは、Yから暗に求められて同行し、Yを精神的に力づけました。そして、強盗殺人の実行を助けることになると認識しつつも、Yの自動車に同乗して追従し、殺害現場に至ったのです(行為2)。

 第1審は、行為1が、Yの一連の計画によるAの生命等の侵害を実現化する危険性を高めたと評価し、これによって必要な因果関係の存在を肯定しました。
 また、行為2も、Yの強盗殺人の意図を強化したと評価しました。
 行為1・2の両方とも幇助行為と認定したわけです。
 これに対し、X側は、事実誤認・法令適用の誤りを理由に控訴しました。

 本判決は、行為1について原判決を破棄し、行為2についてのみ幇助行為を認めました。
 高裁は、行為1がYの現実の強盗殺人の実行行為を幇助したというには、行為1が、それ自体、Yを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったという状況が必要だと示しました。
 しかし、YがXに行為1を指示し、Xがこれを承諾したなど、Xの協力ぶりがYの意を強化したといえるような証拠は特にありません。
 また、そもそも行為1をYが認識した証拠すらなく、精神的な助力・強化は望めないため、行為1がYの実行行為を幇助したといえる関係にはないと判断しました。

 しかし一方で、Yは行為2を心強く感じており、X自身も、Yらの車に追従することがYの強盗殺人を幇助することになるという故意のもとに行為2を行っています。
 この事実から、Xは故意を持って正犯Yの強盗殺人行為を強化し、幇助したといえるとして因果関係を認め、Xに強盗殺人幇助罪を成立させました。

ページトップへ