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強姦罪の実行の着手

~最高裁昭和45年7月28日第三小法廷決定~

 皆さん強姦罪刑法177条)は比較的よくご存知の罪かと思います。
 そうです、暴行や脅迫を用いて、無理やりに女子を姦淫する行為ですよね。

 これは強制的手段によって被害者の反抗を抑える犯罪なので、被害者が怪我を負うこともしばしばあります。
 こうした場合には、この怪我がどの時点で生じたものと評価されるかがとても重要です。
 強姦時に怪我を負ったと評価されれば強姦致傷罪同181条)が、強姦とは別の時と評価されれば強姦罪傷害罪同204条)が成立することになりますが、無期懲役もありうる前者に比べ、有期懲役が限度である後者の方が、格段に刑が軽いからです。

 自動車に引き込んで移動し、その後強姦したという今回の事案において、被害者は姦淫行為時ではなく、自動車に引き込まれる際に怪我を負いました。このため、強姦罪の実行行為がいつ始まったと判断するかによって、成立する罪が変わることになります。
 引き込む行為と姦淫とが時間的・場所的に離れていることに加え、引き込む際の暴行とはまた別に、姦淫の際の暴行・脅迫が予定されている点がポイントです。
 では、事件の内容をみてみましょう。

 被告人Xは、夜間、女性を物色して情交を結ぼうと、うろうろと友人Yの同乗するダンプカーを走らせていました。
 そこに1人で通行中のA女を見つけ、声をかけながら約100m尾行しましたが、全く相手にされません。
 苛立ったYが下車してAに近づいていくのを見て、Xは付近の空き地にダンプカーを止めて待機します。
 YがAを背後から抱きすくめて助手席前まで連れてきたところで、XとYは強姦の意思を通じ、必死に抵抗するAを抑圧し運転席に引き込んだ後、護岸工事現場に連行して、Y、Xの順で姦淫しました。
 このときAは、運転席に引きずり込む際の暴行によって全治約10日間の傷害を負いました

 第1審は、強姦致傷罪の共同正犯(複数人が共同で犯罪を実行すること。自分の行為だけでなく、他の共同正犯者の行為についても責任を問われる)を認め、Xを懲役3年に処し、第2審もこれを維持しました。
 これに対してXは、強姦に着手したのは護岸工事現場に連行した後であって、ダンプカーに引き込む際の傷害は強姦着手前のものだとして、傷害罪と強姦罪の併合罪を主張し、上告しました。

 最高裁は上告を棄却。
 本件の事実関係では、XがAをダンプカーの運転席に引き込もうとした段階で、すでに強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるので、その時点で強姦行為の着手があったと解するのが相当と判断しました。
 この「客観的な危険性」の具体的な判断根拠は示していないものの、引き込み行為時のXの主観(強姦の意思)や、犯罪実現の具体的危険性(男性複数名が女性1人を車に乗せ、容易に逃げられない状態に置いたこと)を考慮したものと考えられています。

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