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公共の危険の認識

~最高裁昭和60年3月28日第一小法廷判決~

 家の前に新聞紙などを置かないよう気を付けているという方は、結構多いのではないでしょうか。
 出していた物に放火されたという話、よく聞きますものね。

 こうした物に放火する行為は、建造物等以外放火罪刑法110条1項)にあたります。
 同条は、108109条が示した以外の物に放火する行為を罰するもので、不特定の物や多数の生命・身体、重要な財産が侵害される危険性(「公共の危険」)が具体化した場合に成立する犯罪です。
 今回紹介する事案では、同罪成立にあたり、被告人に、この公共の危険が生じるという「認識」まで求められるべきかが問題となりました。

 18歳未満の被告人Xと十数名の者からなる暴走グループは、夜間、集団でたむろして遊ぶ仲でしたが、そのグループからA、Bらが離脱し、新グループを結成することになりました。
 そこでXは、A、Bらの単車を破壊すべく、「潰せ」、「燃やせ」などとYに命じます。
 Yはこれを了承し、この命令をZら2名に伝え、実行するよう何度も促しました。
 これを受けて、Zらは、K方1階のガラス窓から約30㎝離れた軒下にとめた、B所有の単車のタンクからガソリンを流出させ、ライターで点火しました。
 火を放たれたことで、単車はサドルシートなど順次燃えてゆき、さらに、K方家屋にも燃え広がって、公共の危険が生じました。

 第1審は、Xに建造物等以外放火罪の共同正犯同60条。複数人が共同して犯罪を実行することで、自分の行為だけでなく、仲間の行為についてもすべて責任を問われる)を成立させ、懲役1年6月以上3年以下の刑に処しました。
 原審は、Xが単車の焼損を命じた時点では、本件のような重大な結果を予定していなかったと考えられること、Xがまだ少年で、前科がないこと等の事情を考慮し、原判決の量刑が重すぎるとして、原判決を破棄、懲役1年6月の刑を言い渡しました。

 X側は、建造物等以外放火罪の成立に公共の危険に対する認識が必要との立場に立ち、この認識がないXに同罪の共同正犯は成立しないと主張して、上告しました。

 最高裁は上告を棄却。
 建造物等以外放火罪が成立するためには、火を放って同罪所定の物を焼くという認識は必要ですが、焼いた結果、公共の危険を発生させるという認識までは必要ないと判断しました。
 したがって、Xに同罪の共同正犯の成立を認めた原判断は正当であると結論付けました。

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