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強盗利得と処分行為

~最高裁昭和32年9月13日判決~

 強盗罪といえば、暴行や脅迫によって財産的価値のあるものを無理やり奪うこと(刑法236条)。

 こう言うと、ナイフでも突きつけてお金を出させ、それを奪うような状況を想像する方がほとんどでしょう。

 しかし、この「財産的価値のあるもの」とは、お金だけではありません。
 お金や物品のような財物同1項)のほか、債務(借金返済など)を免れるなどのような、不法な財産的利益も含まれます(これを強盗罪の中でも特に強盗利得罪といいます。同2項)。

 また、その奪い方も問題となります。
 一般的な強盗罪では、被害者がお金を差し出したり、借金帳消しに同意したりしますが、この場合、本意ではないにせよ、一応は自身の判断で財産の処分を行ったとみることができます。

 これに対し、被告人が被害者に処分行為をさせなかった場合はどう評価されるのでしょう。果たして、強盗罪にあたるのでしょうか?

 以下の事案では、強盗利得罪の成立にあたって、被害者に処分行為を強要したことが必要かが争われました。

 被告人Xは、被害者Aから、数回にわたって借金をしていた上に、Aが第三者に貸した金銭の斡旋取立等も委任されていました。
 ところが、これらをほとんどAの手元に返済しなかったため、不信感を抱いたAは再三Xに督促をすることに。
 いよいよ困ったXは、借金証書類がなかったことから、Aが死ねばその詳細を知る者は他にいなくなると考え、Aを殺して債務を免れようと企てます。
 Aを人気のない工事現場に誘い出して、鉄パイプで頭部などを何度も殴打し、Aが意識を失って倒れるのを見たXは、Aが即死したものと誤信して現場から逃走しました。
 しかしAはまだ生きており、殺害の目的は遂げられませんでした。

 原審は強盗殺人未遂罪同236条2項240条243条)を認めましたが、弁護側は、Xは傷害を加えたもののAに処分行為を強要していないことから、強盗利得罪に被害者の処分行為を求めていたこれまでの判例と矛盾すると主張して上告しました。

 最高裁は上告を棄却。
 強盗利得罪は、通常の強盗罪と同じく、相手の反抗を抑圧できる程度の暴行・脅迫に訴えて、不法な財産的利益を得ていれば処罰可能で、必ずしも相手に処分行為を強制することを要するものではないという基準を示しました。
 したがって、暴行を加えて債権者を殺害し、口を封じて、貸借関係を五里霧中に帰することで、事実上支払い請求ができない状態にして支払を免れようと企てた今回のような場合も、同様に強盗利得罪が成立すると判断しました。

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