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死刑選択の基準 [永山事件]

~最高裁昭和58年7月8日判決~

 現在、わが国の死刑存置支持者は8割を超えています。
 まだまだ「本当に悪いことをしたら死刑になるべきだ」という意識は根強いようですが、皆さんは、死刑になる具体的な状況や行為をご存知でしょうか。
 今回は、この基準に迫るべく、刑を選択すべきかが争われた事案を紹介します。

 被告人Xは、多数の兄弟と共に母一人の貧しい家庭に育ち、恵まれぬ環境の中で肉親の愛情に飢えながら成長しました。
 19歳になったXは、米軍基地内で拳銃を盗み、これを使用して、東京と京都で勤務中の警備員を射殺します。さらに、函館と名古屋ではタクシー強盗を犯して運転手を射殺し、わずか1か月足らずの間に何ら落ち度のない4人の生命を奪って、「連続射殺魔」として人々を不安に陥れました。
 Xは、その後、再び立ち戻った東京で、学校内に侵入して金品を物色しているところを警備員に発見され、逮捕を免れようと警備員に発砲しました。
 最後の事件では、弾が命中せず、殺人の目的を果たせなかったものの、Xは、殺人、強盗殺人、同未遂等、計5件の連続射殺事件を引き起こしたのです。

 1審の判断は死刑でした。
 控訴審は、死刑選択の基準を、どんな裁判所が判断しても死刑を選択したといえる程度の情状がある場合に限定されるべきものと判示。
 そのうえで、本件を「一過性の犯行」とし、不遇な成育歴から、Xは犯行当時18歳未満の少年と同視しうるほど未成熟だったとして、少年法51条(無期刑への緩和)の精神に基づき、死刑を無期懲役に変更しました。
 なお、この際、被告人が控訴審係属中にいわゆる獄中結婚をして心境の変化を生じ、「粗暴な言動」を慎んでいること、および、獄中で綴った手記を出版して得た印税の一部を遺族に贈って慰藉の意を表したことを「起訴後の有利な情状」として考慮しています。
 これに対し検察側は、判例違反と甚だしい量刑不当を主張して上告しました。

 この後、本件は、最高裁の破棄差戻や差戻控訴審の公訴棄却を経て、再び上告され、最高裁の死刑判決に至ります。
 最高裁の示した死刑選択は、犯行の罪質動機態様(特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情社会的影響犯人の年齢前科犯行後の情状等、各情状を併せ考えたとき、その罪責が非常に重大で、罪と刑のバランスという意味でも、社会一般に対して同様の犯罪を予防するという意味でも、止むを得ない場合に、死刑を選択できるというものでした。

 この、いわゆる「永山基準」は、本件以降、長らく死刑選択の基準として用いられてきました。
 しかし最近では、光市母子殺害事件などにより、永山基準とは異なる死刑選択の基準も示されつつあります。これはまた、今後取り上げていくことにしましょう。

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