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事後強盗罪の暴行

~大阪高裁平成7年6月6日判決~

 空き巣が家人に見つかってしまい、包丁を突き付けて脅しながら逃げる。
 一般的には、こんな話も珍しくありません。

 このように、窃盗犯人が逮捕を逃れたり、盗んだものを取り返されないようにするため、他人に暴行・脅迫を加える行為を事後強盗罪といい、強盗罪と同様の扱いを受けます(刑法238条)。

 強盗罪が成立するには、「相手の反抗を抑圧するに足りる程度のもの」の暴行・脅迫を用いたことが必要なのですが、事後強盗も強盗である以上、暴行・脅迫についてはこれと同じ基準を満たさねばならないと考えられています。

 今回紹介する事案では、窃盗犯が逃走するにあたり、被害者を足の裏で蹴って転倒させた行為が、この「相手の反抗を抑圧するに足りる程度」の暴行といえるかが争われました。

 被告人X(36歳、身長180㎝)はY子と共謀の上、大規模スーパーマーケット甲でライター等42点を盗みました。
 その直後、Xは、同店から約30m離れた同店敷地内の通路で、上記犯行を目撃していた同店保安係A(当時62歳、170㎝)に「もしもし」と呼び止められます。
 両手がビニール袋等でふさがっていたXは、Y子を連れて逃走するためにサンダル履きの足を高く上げ、その足の裏でAの胸部を踏み付けるように1回蹴り、その場に仰向けに転倒させる暴行を加え、加療3日間を要する挫傷を負わせました。

 原審がXに事後強盗罪の成立を認めたことに対し、弁護側は暴行の強度を争うため、控訴しました。

 大阪高裁は、窃盗罪235条)を成立させるにとどまりました。
 その根拠として、次の(1)~(5)を挙げています。

  1. 本件暴行は、サンダル履きの足の裏でAの正面から胸の下付近を踏みつけるように1回蹴っただけで、それ自体としては、さほど重い傷害を与えるような性質のものではない
  2. 暴行時のXの意図も、Y子と逃走する目的であって、Aの逮捕意思を制圧するためではなかった
  3. AとXは年齢や体格に差があるけれど、Aは、2年保安係をつとめており、声を掛けるまでの対応や転倒後の対応も落ち着いている上、体格も比較的大柄で、空手の経験者でもある
  4. 現場の近くには自動車・自転車の駐車場があり、時間帯から見ても、Aの逮捕意思等を低下させる等、Aが「Xに反抗すまい」と考えるような事情はなかった
  5. Aはこれ以上Xを追跡していないが、これはY子が傍らに座り込んでいたからで、既に共犯者の1人を確保できたも同然だったことが大きい

 以上のような事情を総合考慮した結果、本件暴行が「相手の反抗を抑圧するに足りる程度」に至っていないと判断したのです。

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