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承継的共犯

~大阪高裁昭和62年7月10日判決~

 ある人間に集団で暴行を加えているときに、また新たな仲間が加わって暴行を重ねることはよくありますね。
 今回の事案もこのようなケースです。まずは、詳細を見てみましょう。

 Pは、自分の彼女Uが、Aにアパート代を立替払いさせられたことなどに憤慨し、Qと共謀して、Aの居室やAを連行するタクシー内でAの顔面を殴打しました。
 さらにAを暴力団組事務所内に連れて行った後も、Pらは居合わせたRと共謀の上、木刀やガラス製灰皿でAの顔面、頭部を殴打するなどしたため、Aは傷害を負いました。
 上階で寝ていた被告人Xは、この物音で目を覚まし、AやPらのいる応接間に降りていきます。
 Xは頭部や顔面から血を流しているAの姿やUの説明などから、すぐに事態を察知し、自分もこれに共同して加担する意思で、Aの顎を手で2、3回突き上げる暴行を加えました。
 その後も、PはAの顔面を手拳で殴打するなどの乱暴をはたらきました。

 複数人で共同して犯罪を実行することを、刑法では「共同正犯」といい、自分が意図していた犯罪の範囲については、他の者が行った事実も含め、まるですべてを自分で実行したかのように罰せられます(60条)。
 このうち、特に、他の者の犯罪実行が終了する前に事情を知って犯罪に加わった場合を「犯罪を引き継いだ」という意味で「承継的共犯」と呼びます。

 今回争われたのは、被告人が、承継的共犯として傷害罪同204条)の共同正犯となるかという点です。承継したという性質が認められなければ、Pらが犯した傷害罪の責任までは問われず、自分の犯した突き上げ行為の報いとして、暴行罪(同208条)の範囲で共同正犯が認められることになりますが...。

 原審は、承継的共犯として傷害罪の共同正犯を認めました。
 これに対し、弁護側は、Xの行為時にPらの傷害は既に終わっており、傷害罪の承継的共犯ではないとして控訴しました。

 大阪高裁は、原審を破棄し、Xに暴行罪の共同正犯を成立させます。

 その際、承継的共犯成立の条件を、「後行者(本件ではX)が、先行者(本件ではPら)の犯罪に途中から共謀加担し、先行者の行為等を自分の犯罪行為の手段として積極的に利用した場合」としました。
 その上で、XにはAに暴行を加える以上の目的はなく、このためにPらの行為を積極的に利用したとはいえないので、関与前に生じた傷害結果については責任を負わないと判断したのです。

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