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法律の不知

~最高裁昭和32年10月18日第二小法廷判決~

 日本の法律は量が膨大なうえ、社会情勢に応じて増えたり、改められたり、廃止されたり...と年々変化します。
 中には違反すると処罰される法律も数々存在しますが、こうした法律のすべてを把握することは至難の業。むしろ、知らない法律だらけなのが普通ですよね。

 今回紹介する事案は、自分のした行為が知らない法律にひっかかっていた、いわゆる「法律の不知」の場合に、情状によっては刑を減軽してよいとする「刑法38条3項但書(以下、法P)」を適用すべきが争われました。

 被告人Xらは、腐って危険となった村の橋を架け替えてくれるように再三村に頼んでいましたが、なかなか実現しませんでした。
 痺れを切らしたXらは、雪で橋が落ちたように装い災害補償金を受ければ、この橋の架け替えをすることができるだろうと考え、共謀して、ダイナマイト15本を用いてこの橋を爆破しました。

 ちなみに、Xらの供述によれば、このときの彼らの認識は、「自分らの行為が重罪になると知らなかった」「ダイナマイトを勝手に使うのは悪いことと思っていたが、罰金ぐらいで済むと思っていた」という程度だったようです。

 1審は、Xに爆発物取締罰則1条違反の罪往来妨害の罪刑法124条1項)を成立させました。
 2審は、上記のXらの供述から、彼らが死刑の可能性もある爆発物取締罰則1条を知らなかったと認定し、犯行の動機、性格、素行などを考慮して、法Pにより刑を減軽しました。
 検察官は、法Pが想定する「法律を知らなかった場合」とは、「その行為が違法だと知らなかったとき」だから、違反した法律の刑の具体的内容を知らなかったからといって、この事件に法Pを適用すべきでないと主張し、上告しました。

 最高裁は、原判決を破棄し、差し戻しました。
 その理由として、法Pは、「自分の行為が違法で処罰可能なものだとは知らなかったが、故意はある(自分の考え通りの結果を実現させた)」と認定される場合に、違法の意識がないことを配慮すべき事情があれば、刑を減軽できると示した規定であると示しました。
 自分の行為に適用される具体的な法律規定や、その刑の重さの程度を知らなかったとしても、「違法な行為だ」との意識があれば故意ありと判断して構わないし、違法の意識がある以上は法Pの適用はないというわけです。
 したがって、本件のXらは、罰条や法定刑の程度を知らなかっただけで、自分の行為が違法だと意識していたのだから、法Pを適用した原判決は同条の解釈適用を誤っているとしました。

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