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共犯と身分

~最高裁昭和42年3月7日第三小法廷判決~

 先日、海外で麻薬の密輸入の嫌疑をかけられていた日本人男性が16年ぶりに帰国したとの報道がありました。
 麻薬密輸入の罪は、国によっては死刑に処せられるほどの重大犯罪。
 日本でも、不正に輸入等する行為は麻薬及び向精神薬取締法12条1項により禁止されており、これに違反して麻薬を輸入等すれば、1年以上の有期懲役に処せられます(同64条1項。以下罪(1))。
 特に、営利目的で罪(1)を犯したときには、3年以上の有期懲役などさらに重い罰が科せられ、場合によっては無期懲役の可能性もあります(同条2項。以下罪(2))。

 被告人Xは、麻薬を日本で売却しようと考えたZから麻薬の密輸入を依頼され、Zの意図を知りつつもYとともにこれを実行しました。

 第1審は、XとYがZの目的を知った上で密輸入した以上、少なくとも第三者(ここではZ)に財産上の利益を得させる目的があるのだから「営利目的あり」と判断しました。
 そこで、X・Y両名に罪(2)の共犯(複数人で共同して罪を犯した者は、全員「罪の手伝い」ではなく「自分の罪としてそれを行った」とみなす考え。刑法60条)を成立させ、懲役10年に処したのです。

 Xは量刑不当等を理由に控訴しましたが、第2審で棄却されたため、さらに上告しました。

 最高裁は第2審の一部を破棄、自判しました。

 まず、X・Yは、Zの目的が営利であると知ってはいたものの、自らは営利目的ではなかったと認定しました。

 次に、罪(1)と罪(2)の関係について、「営利目的の有無」という犯人の状態の違いによって、各犯人に科すべき刑に軽重の区別をしている規定と考えました。
 そのうえで、この「営利目的をもった状態」は一種の「身分」であり、このような罪をめぐる共犯については、「身分により特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する」という刑法65条2項を適用すべきと示しました。

 したがって、営利目的をもつZともたないX・Yとが、共同して麻薬を輸入した本件では、身分のあるZには罪(2)の刑を、身分のないX・Yには罪(1)の刑を科すのがふさわしいと判断したのです。

 以上の基準に従いXの所為を見た結果、Xは懲役8年に処されることとなりました。

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