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誘拐罪の保護法益

~福岡高裁昭和31年4月14日判決~

 犯人にうまく丸め込まれた場合など、誘拐された本人に「誘拐された」という自覚がないこともあります。
 この本人が未成年である場合、その未熟さから判断を誤り、このような状態に陥る危険性は高くなります。

 ここで問題となるのは、未成年者拐取罪刑法224条)は被害者(またはその代理人)でなければ告訴できない、親告罪だということです。
 未成年者自身が被害者なのは間違いありませんが、本人に「誘拐された」という自覚がなければ、告訴しようがありません。したがって、他に被害者がいなければ、告訴できない=無罪ということになります。
 そこで、何が未成年者誘拐罪の「被害」なのか、つまり、同罪が何を保護しているかが問題となります。
 未成年者の自由だけなのか、監督者の権利も保護しているのか...実際の事案ではどう判断されたのでしょう。

 Aは、父が他界し、母も行方不明となっていた未成年者Bを引き取って養育し、農業の手伝いをさせて、実子のように大切にしていました。
 このようなAの思いにもかかわらず、被告人XはBを自分の手元に置こうと画策します。
 YにBを誘惑させ、Xのところに来れば着物が手に入り、貯金もできると吹き込んで、よい働き口であるように思いこませ、Bの判断を誤らせました。
 そのうえ、Aに無断で、その意思に反して、Bを保護されている生活環境から引き離し、自らの実力支配下に移したのです。

 これに対してAが告訴したため、原審はXに未成年者誘拐罪を成立させました。
 Xは、Aには告訴権がないから審理裁判は違法である等と主張して控訴します。

 福岡高裁は、控訴を棄却しました。
 未成年者誘拐罪が保護している法的利益とは、「誘拐された未成年者の自由」だけでなく、両親、後見人等の監護者、または、これに代わって未成年者を事実上監護する権利を有する監督者などの「監護権」にもあるとしました。
 したがって、本件のように未成年者Bを従前から養育・保護して来たAは、Bに対する監護権を持った監督者であって、XのB誘拐行為によりその監護権を侵害された者ということができるから、告訴権があると判断したのです。

 また、未成年者誘拐罪の保護対象に監督者の監護権も含まれている以上、B本人の同意があったとしても、Bの利益保護の見地に立ったAの意思に反し、Bを連れ出したXの行為には、違法性があると結論付けました。

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