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共同正犯と幇助犯

~福岡地裁昭和59年8月30日判決~

 数人で犯罪を行う場合、それぞれの役割の重さに差が出ることがあります。
 その場合、比較的軽い役割を担った者に関して、「主体的に罪を犯した(共同正犯刑法60条)」と評価して正犯と同じ重い責任を問うか、それとも「犯罪の手伝いをしただけ(幇助犯同62条)」と評価して正犯よりも軽い責任を問う(同63条)かが問題となります。
 今回の事案でも、犯罪行為の一端を担った被告人を、強盗殺人未遂罪(同240条243条)の共同正犯として扱うべきか、幇助犯として扱うべきかが争われました。

 被告人Xは、知り合いのSに誘われて一緒に博多駅へ行き、PQRを紹介されました。
 この後Xは、車内での会話ではじめてPQRSの強盗殺人計画を知ることになります。
 すなわち、Sと面識のある暴力団幹部Aを覚せい剤取引を口実にホテルにおびき出し、RがAを拳銃で殺して、Aの持参した覚せい剤はSが奪うというのです。
 Xは、帰りたいと言えば口封じに殺されるかもしれないと考え、黙ってSらの話を聞いていましたが、この車内での謀議では、Xの役割は問題にもされませんでした。
 また、奪った覚せい剤はSのものにすることが決まり、Xには、報酬の約束も実際の報酬も与えられてはいませんでした。

 Xは、内妻がSから危害を加えられるのではという恐れと所持金の少なさから、逃走を諦めて、Rとともに、ホテルの2部屋を予約しました。
 ちなみに、この間、SはRに犯行方法の変更を指示したのですが、これもXには知らされませんでした。

 Sに呼び出されたAとともに、予約した部屋の一室で待機していたX。
 Xは、Sの指示に従い、Aと別室にいる(と見せかけた)買い手との取り次ぎ役を演じました。
 Aが、買い手の覚せい剤検分を承知すると、Sは、覚せい剤を買い手に見せてくるようXに命じ、これを部屋から搬出させました。
 別室でSと覚せい剤をバッグに詰めたXがホテルを出た直後、Sの指示でRがAに拳銃を発射しましたが、殺害には至りませんでした。
 この後Xは、Sの就寝中に覚せい剤1袋をポケットに入れて逃げましたが、その覚せい剤も処分して、Sの追求を免れようと故郷に戻りました。

 福岡地裁は、共同正犯を認めるには、各行為者に「ともに犯罪を遂行する」という共同実行の意思が必要だと示しました。
 そしてこの共同実行の意思を認定する際には、実行行為の分担という事実(一般的にはこれだけで共同実行の意思があったと推認することが多い)に加えて、行為者が実行行為に及んだ事情や犯罪全体から見た行為者の行為の意義も考慮すべきとしました。
 その結果、前記推認を覆すに足りる特段の事情があれば、たとえ行為者が形式上実行行為の一部を担っていても、共同実行の意思なしとして、幇助犯に問うのが相当だと考えたのです。
 本件の場合、Xが強盗殺人未遂の実行行為の一部を担当した事実は認められるものの、Xの客観的状況、加担動機、謀議への関与度、得られる利益、主体的関与の程度、Xの不可欠性などの諸事情を総合的に検討した結果、Xには他の共犯者とともに強盗殺人を行おうとする共同実行の意思がないと判断。
 Xには強盗殺人未遂罪の幇助が成立するとしました。

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