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実行行為の終了時期と中止犯

~福岡高裁平成11年9月7日~

 ついかっとなって犯罪行為に手を付けてしまったけれど、途中でいけないと思い自分の意思で行為を中止した。
 このような状態を「中止犯」といい、必ず刑の減軽または免除があります(刑法43条但書)。

 ただし、これがすんなりと認められるのは「行為に着手したけれど完了してはいない」というときだけです。
 完全に実行してしまった場合、犯人には、そこから結果発生をくい止める真摯な努力が求められます。
 実行完了の有無によって、その後に結果防止のため尽力すべきか決まるわけです。
 この努力が認められなければ、実行完了したけれど運よく結果が発生しなかっただけということで、ただの未遂罪同43条前段)となります。

 今回の事案でも、被告人の犯罪実行行為が完了していたか否かかが争われました。

 妻Aに日頃から暴力等をふるっていた被告人Xは、それを嫌がり実家に帰っていたAを追いかけ、自動車内で復縁を迫っていました。
 しかしAがこれを断ったため、Xは激昂し、Aの首をその意識が薄らぐほどに力一杯絞めました。
 さらに一旦逃げ出したAを連れ戻し、左手で力任せに首を絞め、Aが気を失ってぐったりとなった後も約30秒間にわたって絞め続けたのです。
 その後Xは急に我に返り、手を離してAを放置しました。

 原審は、Xに殺人未遂罪同199条43条前段)を成立させます。
 これに対しX側は、「Xは実行行為完了前に、自らの意思でAの首絞め行為を止めた」として中止犯を主張し、控訴しました。

 福岡高裁は控訴を棄却。

 まず、XがAの死亡を恐れて首絞め行為を中止したとはいえ、この時Aは顔全体にうっ血が生じ、30分~1時間意識を失うなど、客観的にみて現実に生命の危険が生じていたと示しました。
 そして、X自身も、このような危険を生じさせた自分の行為、少なくとも、Aが気を失ったのちも30秒間首を力任せに絞め続けたことに対する認識があるのだから、その時点で本件の実行行為は完了しているとしたのです。

 したがって、Xに中止犯を認めるためには、Aの救護など結果防止のための積極的な行為が必要であり、Xがそのような行為に及んでいない以上、中止犯の成立を認めることはできないと判断しました。

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