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挑発が招いた攻撃と正当防衛

~大阪高裁平成12年6月22日判決~

 相手の急な攻撃から身を守るために、必要最小限の反撃をしたという場合には正当防衛刑法36条)が認められ不可罰になります。
 この正当防衛、もともと「自分は悪くないのに攻撃された」という場合を想定したものですが、自分が挑発して相手の攻撃を招いた場合には、反撃行為はどう評価されるのでしょうか。

 パブのカウンターで飲酒していた被告人Xは、椅子2脚を隔てた右側の客Aの言動にいらいらを募らせ、小馬鹿にされたと感じていました。
 Xが「男だったらはっきりせんかい」などと大声を出し、自分の右側の椅子をAに向け強く蹴りつけたところ、2脚の椅子が将棋倒しになってAの方に転倒。
 これを見た同店経営者Bは「Aはかなり酔っているから相手にしないで帰ってください」とXを促します。
 帰宅することにしたXが出入口へ向かった時、背後に人の気配を感じて振り向くと、やや前かがみになったAが肩の上あたりまで左手拳をあげ、力なく突き出してきました。
 Xが体をひねってAの拳をかわし、左掌でAの顔面を強く突くと、Aは尻餅をつきながら後方に転倒し、頭部をレンガ製の床面で強打し脳挫傷を起こして、17日後死亡しました。

 1審はXに正当防衛を成立させ、無罪を言い渡しましたが、検察側はXの行為は正当防衛に当たらず、傷害致死罪同205条)だとして控訴しました。

 大阪高裁は1審判決を破棄し、自判しました。
 まず、レンガ製の壁面や床面に囲まれた狭い場所で、至近距離から酩酊している相手の顔面を左掌で強く突くのは明らかに危険性が高い行為であるし、Aよりも体格・攻撃防衛能力が格段に勝っていたXならばAの弱い攻撃を容易に回避できたのに、手加減もしなかったという点を指摘。
 これにXが椅子を蹴り付けた挑発行為がAの攻撃を誘発したという事情を勘案し、事案全体からAの攻撃とXの反撃の均衡を考えると、挑発がない場合に比べ、Xに許される反撃の範囲はより限定されるため、本件Xの行為はこの範囲になく不相当であると判断されました。

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