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空手練習事件

~大阪地裁昭和62年4月21日判決~

 武道の練習にある程度の傷害はつきものですから、いちいちそれを「傷害」とカウントするわけにはいきません。
 普通は相手方も受傷を承諾しているということで、傷害行為の違法性が打ち消され、犯罪でないという扱いになります。

 しかし、技の使い方を誤れば強力な攻撃になってしまうのも事実です。
 今回の事案では、武道練習時の被害者の受傷承諾が、どの程度の傷害の違法性を打ち消すかが争われました。

 長年独習で空手をしていた被告人Xは、仲の良いAに空手の技を教え、しばしばAを相手にその練習をしていました。

 ある日の深夜も、2人は路上で空手の練習として技を掛け合っていました。
 その方法は寸止め(相手の体に当たる寸前に技を止めるもの)ではなく、相手を現に殴打・足蹴りするもので、XはAの攻撃に対応するうち、興奮のあまり、一方的にAの胸部・腹部・背部等を数十回にわたり手拳で殴打したり、革製ブーツを履いた足で足蹴りしたりして転倒させるなどし、その肋骨を折るなどしてAを死なせてしまいます。

 検察側が傷害致死罪刑法205条)を主張する一方、弁護側は、本件が武道練習中の傷害行為である以上、Aの承諾があり、違法性はないとして、無罪を主張しました。

 これに対し、大阪地裁は、Xに傷害致死罪を成立させました。
 被害者の承諾に基づく行為として、スポーツ練習中の加害行為を違法性なしとみるには、特に「空手」という危険な格闘技では、単に練習中であったというだけでは足りず、その危険性に鑑みて、練習の方法・程度が、社会的に相当と認められる態様のものでなければならないとの基準を示しました。
 そのうえで、Aの主な受傷や死因が肋骨骨折による出血失血であること、Xは練習経験・実力の点からAを指導すべき立場にあったこと、Xらが空手をしていたのが深夜人通りの少ない路上であるなどの事情を考えると、練習場としては不相当な場所で、正規のルールに従わずに、危険な方法・態様の練習を行ったと評価できるとしました。
 したがって、このような行為が社会的に相当といえる範囲内にないことは明らかであり、Xの行為は違法なものと結論付けられたのです。

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