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家庭用プリント複合機による通貨偽造・行使

~さいたま地裁平成21年10月22日判決~

 パソコンの普及に伴い、一般家庭にも高性能なプリンターが置かれるようになりました。
 何でも手軽に綺麗にコピーできるのは大変よいことなのですが、簡単にそれを悪用してしまう人もいるようで...。

 被告人Xは、小遣いが少なく遊興費が不足していたことから、自由に遊ぶ金が欲しいと常々考えていました。
 カラーコピーができる自宅の家庭用プリント複合機を利用して、1万円札をプリンター用紙に裏表がずれないように両面複写し、コピーとはいえ一見偽物だと見破れないほど精巧な偽造1万円札4枚を作成したX。
 彼はこのうち2枚を茶封筒に入れ、出会い系サイトで知り合ったAに対し、性的サービスを受けることの対価として、あたかも本物のように装って手渡し使用しました。

 検察側はXを通貨偽造、同行使(刑法148条)の罪で起訴しました。
 弁護側は、刑の酌量軽減を求めました。

 さいたま地裁は、上記の経緯から、Xが通貨を偽造し、これを使った点は間違いないとし、この罪が、通貨の信用を失墜させ、通貨の円滑な流用を阻害して一般の経済社会にも重大な悪影響を与える重大犯罪であると確認。
 Xの個別の事情については、次のように考えました。

 まず、犯行後のXの態度については、残った偽造1万円札2枚を用水路に捨て、警察から事情を聞かれた当初は拾ったものだと答えていた点、公判中も犯行動機等を曖昧に供述した点から、素直に悔い改める様子はないと評価します。

 しかし、本件犯行は組織的なものではなく、すかしの入っていない、色彩も材質も本物とは異なる拙劣な偽造であって、常習的・職業的な犯行ではないと認めました。
 そのうえで、

  1. Xが偽造した1万円札は4枚と比較的少ない点
  2. 偽造通貨を行使したAから現実には性的サービスを受けないまま本物の1万9000円を渡し、ホテル代の4000円もXが負担したため、行使の相手方に経済的な損失はない点
  3. 偽造された4枚の通貨はすべて警察が押収したので本件犯行による被害は拡大していない点

 から、本件被害はわずかと結論付けました。

 これに加え、Xに前科前歴、不良交友がなく、今後、妻や父親等、家族の支えで更生可能なこと、幼い子供を養育する必要があることも考慮しました。

 これら一切の事情から、今回に限り、社会内での自力更生の機会を付与すべきと判断。
 Xには懲役3年、執行猶予5年が言い渡されました。

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