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傷害致死の教唆

~大審院大正13年4月29日判決~

 実行犯である者が誰かから入れ知恵されて犯罪を行った場合、この実行犯だけでなく、入れ知恵した人物も処罰して欲しいと思いますよね?
 このように、人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせることを「教唆」といい、実行犯と同じ刑を科されることになっています(刑法61条1項

 ただ、犯罪には想定外の事態もつきものです。
 傷害を指示したにもかかわらず、行き過ぎて被害者を死なせてしまったというように、実行犯が過失で教唆した犯罪よりも重い結果を引き起こした場合、教唆犯はその重い結果の責任まで負うべきなのでしょうか。

 被告人Xは、数名と共謀して、AとBに暴行を加えるようYら数名に教唆しました。
 Yらは、この教唆に従い、ステッキや下駄等でAとBを殴打したり、日本刀で斬りつけたり、投石するなどの暴行を加えます。
 この結果、Aは重傷を負い、Bは死亡しました。

 原審は、Bの死亡につき、Xに傷害致死罪(同205条)の教唆犯を成立させました。
 Xには、Yらが起こした重い結果についても責任があるとしたわけです。
 これに対し弁護側は、Xが致死を教唆したという証拠が示されていないとして、理由不備の違法を主張し、上告しました。

 大審院は上告を棄却。
 まず、傷害致死罪成立について、「人の身体を不法に侵害する認識を持って活動をした結果、人を死なせた」という事実があればよいとの基準を示しました。
 ここで求められる意思は「人にただ暴行を加える」というもので、人を死なせることまでの故意はなくて当たり前と考えています(もし人を死なせる故意がある場合は、殺人罪(同199条)を成立させるべきだから)。

 実行犯であろうが教唆犯であろうがこの基準は同じといえるため、教唆による暴行が原因で、身体傷害どころか死亡の結果までが生じてしまった場合、傷害の意思しかない教唆者であっても傷害致死罪の責任を負うのは当然のことと結論付けたのです。

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