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幼児の証言能力

~東京高裁昭和46年10月20日判決~

 幼い子供の話を、あなたはどこまで信じますか?

 刑事裁判では、事件解決のためにしばしば証人をたてますが、証人に年齢制限はありません(刑事訴訟法143条)。
 ただ、証言能力とは、「証人が体験した事実を認識・記憶・表現する力」とされているため、これがない者は証人としての資格がないと考えられます。
 では、幼児(満1歳~小学校就学前の者、児童福祉法4条)に証言能力はあるのでしょうか。

 被害者A(当時4歳11か月)は、目撃者B(当時4歳)らと遊んでいた時、うつむきに倒れてしまいました。
 そこへ被告人Xの自動車が後退し、起き上がろうとしていたAに衝突して脾臓破裂を負わせたとして、Xは業務上過失傷害罪で起訴されます。

 Aは、検察官供述調書の作成時5歳7か月、公判準備の証言時に5歳9か月であり、この2つの証言には部分的な食い違いが見られました。
 また、Bは、証言時に5歳でした。

 第1審はAの検察官供述調書とBの証言を採用し、Xを有罪としました。
 これに対しX側は、Aの証言の食い違いを指摘して証拠としての能力に欠けるとしたうえでAとBの証言能力を否定し、Aの傷害は自分で転倒したときに生じたものだと主張して控訴しました。

 東京高裁は控訴を棄却。

 まず、幼児の供述であっても供述事項によっては証言能力を肯定できるとし、簡単な事柄についてはかなりの程度の理解・表現能力・記憶力があるとし、本件の交通事故状況もこの簡単な事柄にあたるとしました。
 そして証人Bにつき、事件の半年後に裁判官の尋問を受けた際、自ら目撃した体験をもとに供述を行っており、その証言能力に欠けるところはないとの評価を下しました。
 Aの証言能力についても同様としました。
 Aの2つの証言の食い違いに関しては、幼児であるAがその場の雰囲気に影響された事情もうかがえるとしながらも、直接Aの供述を聞いたうえで、事件との時間的間隔が比較的短い、前者の供述内容(自分がうつむきに転んで起き上がったところへ自動車が後退して来たので「止めて止めて」といったが、そのままマフラーがぶつかり、上向きに倒れたというもの)を信用すべきとした原裁判所の判断も納得できるとしました。

 これらの証拠に、Aを診察・手術した医師2名の証言、「バック時にショックを感じ、車の後ろにまわって見ると男の子がおなかをかかえてしゃがんでいたので、ぶつかってしまったと思った」というXの捜査段階での供述、自動車後部の埃の付着状況等を合せると誤認の疑いはないとしたのです。

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