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被相続人の殺害と2項強盗罪

~東京高裁平成元年2月27日判決~

 強盗罪刑法236条)とは、暴行や脅迫によって他人の財物(お金など)を強引に奪う行為をいいます。
 奪ったものが厳密には財物でなくとも、財産に関する利益を得たのであれば、実際は財物を奪ったのと同じようなものですよね。
 そこで、同条2項は、暴行・脅迫によって財産上の利益を得た場合を「強盗利得罪(通称・2項強盗罪)」として規定し、強盗罪の一形態として罰することにしています。

 今回の事案では、「相続人の地位」がこの「財産上の利益」といえるかが争われました。

 被告人Xは、Yと共謀して、Yの両親A・Bを殺害し、唯一の相続人であるYに全財産を相続させて財産上の不法の利益を得ようと企てたうえ、第三者による強盗と見せかけるため、現場にある現金をも強取しようとしていました。
 そしてA・B方に侵入し、就寝中の両名にカッターナイフで切りつけましたが、激しい抵抗にあい、目的を遂げませんでした。

 1審は、相続による財産の継承は「財産上の利益」に当たるとして、Xに2項強盗殺人未遂罪の成立を認めました(同236条2項240条243条)。
 X側は、この「財産上の利益である」という判断を不服として控訴します。

 東京高裁は、2項強盗罪の成立を否定し、本件を破棄差戻しました。

 その理由として、まず、暴行・脅迫を使って被害者の反抗をおさえ、無理矢理財産上の利益を得るという2項強盗罪の性質こそが、普通の強盗罪の「財物の強取」に匹敵するものであって、両者を同様に処罰する根拠であるという点を指摘しました。
 したがって、2項強盗罪の対象となる「財産上の利益」は、普通の強盗罪の「財物」と同じく、本来、被害者が任意に処分できるものでなければならないとしました。
 そのうえで、相続開始による財産の承継は、生前の意志に基づく遺贈などと違い、人の死亡によってしか生じないものだから、もともと任意に相続を開始することはできず、処分の余地がないため、「財産上の利益」ではないと考えました。

 以上より、本件のような場合は、強盗殺人罪ではなく、単純な殺人罪(同199条)に絡めて論じるべきで、Xの意図は極めて悪質な動機として情状面で考慮すれば足りるとしたのです。

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