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「写し」は証拠となるか

~東京高裁昭和58年7月13日判決~

 刑事裁判では立証のためにさまざまな証拠が提出されますが、その中には証拠の「写し」も含まれます。
 「写し」というのは、基本的に、文書の原本を同一の文字・記号で転写した文書をいいますが、映像化の進んだ近年では、映像や画像も証拠の「写し」として申請することも少なくありません。
 こうした「写し」は、どのような場合に証拠として認められるのでしょうか。

 今回の事案は、被告人ら多数の学生等が沖縄返還協定批准阻止闘争の一環として、「首都総決集戦」を掲げ、3名の警察官に火炎瓶を投げて傷害を負わせ、派出所に放火したうえに、警察官Aを鉄パイプ等で乱打し、火炎瓶で炎上させて死亡させた事件(いわゆる「渋谷暴動事件」)の控訴審です。

 この裁判では、検察側から、放映されたテレビニュース映像を録画したビデオテープ2本と、その映像の一部を静止写真化したテレビニュース画面写真帳2冊という、「写し」にあたる証拠が提出されました。
 ビデオテープは、事件当日に放映された各テレビ局のニュース番組を警察官が録画したものです。
 また、写真帳には、主に、

  1. 炎上している派出所とその付近にいる集団
  2. Aが倒れその衣服が燃えている状況
  3. Aを他の警察官が救助している状況

 をそれぞれ警察官が写真撮影した静止写真44枚が綴られていました。

 第1審は、これらの証拠を採用し、被告人らに殺人罪刑法199条)、現住建造物等放火罪同108条)などを成立させましたが、弁護側は、これを不服として控訴しました。

 東京高裁は、控訴の一部を棄却しました。
 まず、これら「写し」の証拠の原本はビデオテープ映像であって、そのさらに原本であるテレビフィルムは、証拠としての証明能力があるということを確認しました。
 そのうえで、原本に代えて、その写しを証拠として用いてよいのは、

  1. 原本が存在すること
    (写しを作成し、原本と同じだと確認する時点で存在すればよく、写しを証拠として申請する時点まで存在する必要はない。テレビ映像は放送とともに消滅するので。)
  2. 写しが原本を忠実に再現したものであること
    (原本の完全な複製である必要はなく、立証したい事柄に必要な性状が忠実に再現されていればよい。)
  3. 立証したい事柄が、写しでは再現できない原本の性状(たとえば、材質、凹凸、賺し紋様の有無、重量など)ではないこと

 という3基準を満たす時だと示しました。

 本件で求められる証拠とは、殺人や放火等の状況が確認できるものであり、提出された「写し」の証拠はこれら3基準を満たしているため、証拠として認められたわけです。

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