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同時傷害の特例と傷害致死罪

~最高裁昭和26年9月20日判決~

 普通、罪を問う際には、「誰のどの行為がどれだけの被害を出したか」を示し、それに見合った罰を与えるものです。
 しかし、数人がかりで1人を暴行したような場合は、どの傷が誰によるものか特定できないため、誰に結果の責任を求めるべきかわからなくなることが多いのです。
 だからといって被害を放置するわけにはいかないということで、刑法207条は、複数人で被害者に傷害を負わせた場合、たとえ加害者側が共謀していなくても共犯として暴行したとみなし、全員に傷害結果の責任を負わせることにしています(同時傷害の特例)。

 今回の事案では、この特例を、被害者が暴行の末死亡したという傷害致死(同205条)事件にも用いてよいかが争われました。

 親密な間柄にあった被告人X、Yは、喫茶店でウイスキーを飲んだ後、旅館でも飲酒していました。
 そこでXが被害者Aと口論になり、Aの頭部を手拳で殴打。
 その時旅館から帰ろうとしていたYは、XとAが争っているのを見つけ、即座に、Xに加勢しようと靴履きのままAの頭部顔面等を蹴りました。
 この結果、Aは頭部口腔内出血により死亡しましたが、X、Yのどちらの暴行が原因となったのかはわかりませんでした。

 原審は、X、Y両名に傷害致死罪と同時傷害の特例を適用し、Aの死に対する責任を認めましたが、Xは心神耗弱、Yは情状酌量を理由に刑を軽減しました。
 これに対し両名の弁護人は、同時傷害の特例を適用した原判決は、法律の適用を誤っていると主張して上告しました。

 最高裁は上告を棄却。
 まず、同時傷害の特例の性質を、因果関係の立証が困難というだけで、同時に暴行して傷害等の結果が起きても誰にも責任を負わせられない不合理や、実際に傷害を加えた者が責任を免れるという欠陥を救済するための政策的規定であると指摘しました。
 そのうえで、この特例は基本的に傷害に関するものであるけれども、「立証の困難」という点では傷害致死の場合も同じであるから、傷害致死罪に本条を適用しても構わないと判断しました。
 したがって、原判決に違法はないと結論付けたのです。

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