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攻撃の予測と正当防衛

~最高裁昭和30年10月25日判決~

 正当な理由なく急に攻撃されたならば、それから身を守るために仕方なく反撃する行為は「正当防衛刑法36条1項)」として罰されません。
 仮にこの反撃が行き過ぎても、行為者の落ち度は少ないとして「過剰防衛(同法2項)」となり、刑を軽くしたり免除したりといった措置が許されています。

 では、行為者が「相手が攻撃してくるだろう」とあらかじめ予測して反撃の準備をしていた場合、「『急に』攻撃されたから、こうするしかなかったんだ。正当防衛だ」という言い分が通るでしょうか?

 被告人Xは、飲食店で被害者Aが喧嘩を始めたため、Pと仲裁に入りました。
 この仲裁に不満を抱いたAが包丁でPの鼻を傷つけ、Xは一旦その場から逃げましたが、再びQと店に引き返します。
 すると、またもやAが出刃包丁でXを襲い、それを止めようとしたQが指を負傷してしまいました。

 こうした仕打ちに憤激したXは、Aを威嚇して謝罪させ、なお相手が攻撃してきたら応戦しようと考え、自宅から、日本刀一振を抜身のまま持ち出し、同店付近の路上からRと様子をうかがいました。
 そこに通りがかったAは、Xを見つけるなりその名を呼び、いきなり出刃包丁で攻撃を仕掛け、Xはそれに応戦するうち、日本刀で数回Aに斬りつけました。
 この結果、Aは出血多量で死亡するに至ったのです。

 原審は、XがAの攻撃を予測して応戦しようとしていた以上、Aの攻撃は急なものではない(急迫性はない)として、Xに傷害致死罪(刑法205条1項)を成立させました。
 これに対し、弁護側が急迫性を主張して上告しました。

 最高裁は上告を棄却。
 Aがいきなり出刃包丁でXに突きかかった時、XはこのAの攻撃を早くから十分予測し、これに立ち向かって敏速有力な反撃の傷害を加えられるように十分な用意を整えており、自ら進んでAと対面しようとしていたと指摘しました。
 したがって、Aの攻撃はXにとって急迫のものではなく、XがAに加えた傷害も権利防衛のためやむを得ず生じたものではないとし、正当防衛・過剰防衛をともに否定した原審の判断を支持しました。

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