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精神的激励と幇助

~大審院昭和7年6月14日判決~

 刑法では、殺人を企てている者に凶器となる包丁を渡すなど、実行行為以外の方法で犯罪実行を容易にした者を「幇助犯」(刑法62条)と呼びます。
 幇助犯は、正犯(実行犯など主体的に犯罪を行った者)よりも軽減はされるものの、その犯罪に一役買ったものとして正犯とともに罰せられることになっています。

 では、罪を犯そうとしている者に対し、「やったらいい」「頑張れ」などと応援するような言葉をかけた場合、この行動は裁判でどのような評価を下されるのでしょうか?

 被告人Xの家に居候していたYは、Aに「生意気をして歩くと打ち殺すぞ」と罵倒され、殴打されたことから、Aの殺害を決意しました。
 YがXに対し、Xの家にある日本刀でAを殺害するつもりだと打ち明けたところ、Aと仲が悪かったXはこれをすぐに了解。
 「男というものはやるときにはやらねばならない。もしAを殺害することがあれば、自分が刑務所に差し入れはしてやる」と言ってYを激励しました。
 これによりますます殺意を強くしたYは、翌日、日本刀でAに切り付けましたが、重傷を負わせるにとどまりました。

 原審は、Xに殺人未遂罪刑法203条)の幇助犯を成立させました。
 これに対し、弁護側は、YがXの激励によりますます殺意を強固にしたという点につき、激励の程度からしてこれを幇助と呼ぶべきではないと主張し、上告しました。

 大審院は上告を棄却。
 XがYから殺人の決意を聞いたとき、言葉でYを激励してその決意を強固なものにし、Yがその決意を実行して殺人未遂罪を犯した以上、Xは精神的にYの犯行を幇助したといって構わないと判断しました。
 それゆえ、原審判断は正しく、Xには殺人未遂罪の幇助犯が妥当であると示したのです。

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