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混合的包括一罪(窃盗・詐欺と強盗殺人未遂の関係)

~最高裁昭和61年11月18日決定~

 個々の行為を見ていけばそれぞれが独立の犯罪を構成する場合であっても、そこにある種の関連性があれば、それらを中心的なひとつの罪に集約して処断することができます(包括一罪)。

 今回ご紹介する事案では、被告人らの一連の行為を強盗殺人未遂罪刑法240条243条)に集約しようとしているのですが、この強盗殺人未遂罪、「財物を奪う目的で」人を殺害しようとするときに適用されるものなのです。
 本件では、被告人らが財物を奪い終えたあとで殺人未遂行為を行ったため、この殺人未遂行為が「財物を奪う目的で」行われたものといえるか、つまりすべてを強盗殺人未遂行為に集約してよいのかが争われました。

 被告人Xは、暴力団Aの組員Bらと共に、暴力団Pの幹部Qを殺害して覚せい剤(Pの資金源)を奪取しようと企てました。
 Qと面識のあるBがQに覚せい剤取引を持ちかけ、ホテルの一室におびき出した後、買主に検分させることを口実にQの持参した覚せい剤を受け取り、同室から搬出して、別室に待機していたXに合図します。
 しばらくして(Bが覚せい剤を持って同ホテルから逃走した頃)Qの部屋に入ったXは、至近距離からQを狙って拳銃を5発発射し、すべて命中させましたが、Qは防弾チョッキを着用していたため辛うじて重傷ですみました。
 ちなみに、法律上は、Bが覚せい剤をホテルから持ち出した時点で確定的に財物を奪ったといえるため、ここで窃盗罪(同235条)あるいは詐欺罪(同246条)が成立します。

 1・2審ともに、X・B両名に強盗殺人未遂罪の共同正犯同60条)の成立を認めました。
 一方、X側は、Qを射殺しようとした行為は覚せい剤奪取の手段になりえないと主張し、強盗殺人未遂罪の不成立を訴えて上告しました。

 最高裁は上告を棄却し、Xに強盗殺人未遂罪を成立させました。
 このとき最高裁は、先行する覚せい剤取得行為が単体で窃盗罪・詐欺罪のいずれかにあたるとしても、全体的に見て関連性があるといえれば包括一罪で処理できると考えました。
 そのうえで事実関係をみたとき、Xによる拳銃発射行為は、明らかにQを殺害して覚せい剤の返還または代金の支払いを免れ、財産上不法の利益(直接お金を手に入れるわけではないけれど、代金支払などの財産上の義務を免れることで、結果的に手に入る不法な利益。これを得るために傷害手段などを用いる場合も強盗罪にあたる)を得る目的で行われたものと評価できるとしました。
 究極的にはすべてひとつの覚せい剤をめぐって行われた行為なのだから、その関連性は十分に強く、包括一罪で処理してもよいと考えたのです。
 その結果、窃盗罪(あるいは詐欺罪)と強盗殺人未遂罪の包括一罪が成立し、最終的に後者の刑で処断されたというわけです。

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