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窃盗の機会と事後強盗

~最高裁平成14年2月14日決定~

 盗品を取り返されたくない、逮捕されたくないなどの理由から、窃盗犯が人を傷つけた場合、刑法はそれを「事後強盗罪238条)」と呼んで、実力行使で財物を奪った強盗犯と同様に扱います。
 ただし、事後強盗罪を認めるにあたっては、「はじめの窃盗行為(窃盗の機会)の継続中に、後の暴行行為が行われた」と言えなければなりません。
 これは、窃盗と暴行に関連性がある場合、人の殺傷につながる危険性が高いという強盗の性質を重視したもので、ここで単なる「窃盗+暴行」との区別をつけることになります。

 では、窃盗と暴行の間に3時間のブランクがあった場合はどう評価するべきなのでしょうか。

 被告人Xは、午後3時過ぎ頃、被害者A方に侵入し、Aの留守中に寝室タンスから指輪(時価約500円相当)を窃取してポケットに入れました。
 数日ほどA方の天井に隠れ、家人の外出時に食べ物などを盗もうと考えたXは、午後3時半過ぎ頃、焼酎、落花生、ライト、週刊誌等を手に天井裏に上がり、寝室の真上で、焼酎を飲んだり、眠ったりしながら過ごしました。
 午後4時半頃に帰宅したAは、誰か家に侵入したのではと疑いを持っていましたが、午後5時半頃、人が移動するような天井裏からの物音に気付き、警察に通報します。
 午後6時過ぎに警察官2名(P・Q)がA方の天井裏に上がったところ、Xは、逮捕を免れようと所持していたナイフで警察官Pを切りつけ、顔面、胸部などに加療3週間を要する傷害を与えました。

 1審は、本件の窃盗と暴行が時間的・場所的に離れているとし、暴行は窃盗の機会継続中になされたものではないと判断。強盗致傷罪(240条)の成立を否定しました。
 2審は、事実誤認を理由に原判決を破棄し、強盗致傷罪を成立させます。
 その理由として挙げられたのは

  1. 場所的な接着性(Xが潜んでいた天井裏は窃盗の犯行場所の真上である)
  2. 時間的な接着性(Xは窃盗行為の約1時間後にAに察知されていた上、X自身も更なる窃盗の意思を持ち続けていた)

の2点です。
 裁判所はこれらの点から、警察官への暴行時、Xは未だ被害者らの追求下にあり、すぐにも盗品を取り返されたり、逮捕される可能性のある「窃盗の機会」継続中であったと指摘しました。

 被告人側はこれを不服として上告しましたが、最高裁は上告を棄却。
 2審と同様の判断にたち、原審判決の正当性を強調しました。

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