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攻撃終了と過剰攻撃

~最高裁平成20年6月25日決定~

 相手の急な攻撃を避けるために反撃した場合、それが仕方のない限度であれば、「正当防衛」として罰されません(刑法36条1項)。
 反撃が少々行き過ぎても、その過剰な部分を情状酌量して罰することになります(同2項)。
 この「正当防衛」が認められるのは、

  1. 急 で
  2. 不正 な侵害から
  3. 身体等を守るため(防衛の意思)
  4. 仕方なく攻撃した

 という4条件を満たす場合です。

 では、以下の事案はどう評価されるのでしょうか。

 Aは被告人Xを呼び出した上、突然殴りかかり、掴みかかりました。
 Xもこれに反撃して揉み合いになり、XがAを突き放しながら顔面を1回殴打すると、Aはアルミ製灰皿(直径19㎝、高さ60㎝)をXに投げつけました。
 Xはこれを避け、反動で体勢を崩したAの顔面を殴打します。
 転倒したAははずみで後頭部を打ち付け、仰向けに倒れたまま意識を失ったように動かなくなりました(第1暴行)。

 このような状況を把握してもなお憤慨の収まらなかったXは、Aに「おれを甘く見ているな。おれに勝てるつもりでいるのか」などと言いながら、腹部を足蹴にしたり踏み付けたり、膝をぶつけたりしました(第2暴行)。

 Aは結局、搬送先の病院でくも膜下出血により死亡。
 死因となったのは第1暴行で、第2暴行では、肋骨骨折、脾臓挫滅、腸間膜挫滅等が生じていました。

 1審は過剰防衛による傷害致死罪(同205条)を認めましたが、2審は、Xの第1暴行については正当防衛が、第2暴行には傷害罪(同204条)が成立するとしました。
 これに対し被告人側は、第2暴行につき事実誤認があると主張して上告しました。

 最高裁は上告を棄却。

 第2行為時のXは、転倒したAがさらに侵害してくる可能性はないと認識しており、専ら攻撃する意思だったと指摘して、第2暴行は正当防衛の要件(1)~(4)のいずれも満たさないとしました。
 そして、両暴行は、時間的・場所的には連続していても、

  • Aによる侵害の継続性
  • Xの防衛の意思の有無

 の2点で、明らかに違う性質のものと考えました。
 さらに、Xの発言や抵抗不能のAに相当激しい第2暴行を加えた事実をあわせると、もう第1行為と第2行為の間は断絶しているというべきとしたのです。
 それゆえ、Xの第2行為は、「Aの急迫不正の侵害に繰り返し反撃しているうちに、その反撃が量的に過剰になったもの」とはいえないと判断しました。

 以上より、全体的に見れば、両暴行を1個の過剰防衛とするのは相当でなく、第1暴行については正当防衛、第2暴行については、正当防衛はもとより過剰防衛を論じる余地もないと結論付けました。
 したがって、Xは第2暴行でAに負わせた傷害の責任を負うとしました。

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