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発覚を恐れての放火中止

~大審院昭和12年9月21日判決~

 犯行に着手したものの、自分の意思で犯行を中止した場合を「中止犯」といいます。
 中止犯は、「自分の意思で踏みとどまった」という任意性が評価され、刑を減軽または免除されるのですが(刑法43条但書)、犯行発覚を恐れて行為を中止した場合は、任意性ありといえるのでしょうか。

 被告人X・Yは共謀して保険金を騙し取る計画を立てていました。
 2人は、薪小屋いっぱいの枯割木に石油を入れた竹筒をたてかけ、その上端と割木との間に線香を渡してこれに点火するという時限発火装置を使い、放火するつもりでした。
 未明、XはYが線香に点火したのを確認したものの、その後、自分で放火の媒介となる物を取り除き、独立燃焼に至る前に消火をしました。

 原審は、このようなXの消火行為を「放火の時刻が遅く、発火が明け方に及ぶ恐れがあったため、明るくなれば犯行が発覚するのではと恐れたことによるもの」と認定。中止犯の成立を認めませんでした。
 これに対して、X側が事実誤認を主張し、中止犯成立を求めて上告しました。

 大審院は上告を棄却しました。
 原審と同じく、Xの消火行為の原因は、犯行発覚への恐れであると認定しました。
 この「犯罪の発覚を恐れる」心理は、経験上一般に、犯罪の遂行を妨げる事情になり得るものなので、Xの行為には中止犯を認めるべき任意性が欠けており、「自分の意思で踏みとどまった」とはいい難いとして、やはり中止犯の成立を認めなかったのです。

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