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被害者の持病と因果関係

~最高裁昭和36年11月21日決定~

 酒癖の悪い人が周囲に絡んだり危害を加えるような光景は珍しくありませんし、大抵の場合は重大事件にならずに済みます。
 しかし、その絡んだ相手に持病があったとしたらどうでしょうか。

 酩酊した被告人Xは、Aの小料理店でAに乱暴な振る舞いをしました。
 Aと同棲中のB(当時45歳)はXに帰宅を促しますが、Xはこれに憤慨し、両手でBのワイシャツの襟をつかんで首を強く絞めつけたうえ、突き飛ばして、Bを店の出入口外側の道路上に仰向けに転倒させてしまいます。
 普通の相手ならば、この行為自体は必ずしも致命的なものではありませんでした。
 ところが、Bは、心臓に高度の肥大と白色瘢痕化部分、心冠動脈にあきらかな狭窄という、大きな持病があったのです。
 ちなみに、瘢痕は正常な筋肉と違って収縮しない組織であり、この面積が多いと心臓の機能が低下するといわれています。
 Xの暴行にこの持病があいまって、Bは、心筋梗塞を起こして死亡しました。

 1審・2審は、Xに傷害致死罪刑法205条1項)の成立を認めました。
 一方X側は、Bの心臓の病変は重篤で、日常の行動の中でいつでも死亡する可能性があったと主張。今回のBの死の原因がXの暴行か自然死かを審理するべきとして上告しました。

 これに対し、最高裁は上告を棄却。
 最高裁は以前にも、骨質脆弱等の体質を持つ被害者が暴行を受けて死亡した事案で、被告人の暴行と被害者の死との因果関係を認定していました(最高裁昭和22年11月14日判決)。
 本件でも、最高裁はこの判例の考え方を踏襲し、「ある行為(Xの暴行)と他の事実(Bの持病)とが重なって結果(Bの死亡)が生じた」という事実は、この行為と結果との因果関係を認めるうえで何ら障壁にならないとしました。
 このことから、Xの暴行はやはりBの死亡原因といえると結論付け、これ以上の審理は不要としたのです。

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