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親権者の長女連れ去りと国外移送略取罪

~最高裁平成15年3月18日決定~

 国際結婚の破綻の裏で、片方の親が子を国外へ連れ出す事件が多発しています。
 この種の事件でよく報道されるのは、日本人が外国人の配偶者から訴えられたケースですが、日本国内で外国人が裁かれたこともあるのです。

 オランダ国籍を有する外国人Xは、来日後、日本人女性Aと結婚しましたが、その後別居していました。
 その後、長女Bが生まれ、ずっとAがBを監護養育していたのですが、XがA・Bとの同居を希望するようになりました。
 しかし、Aはこれに応じず、逆に離婚調停を申立てるなどしたため、関係修復の糸口はつかめないままになっていたのです。
 結局調停は不調に終わりましたが、Xは2歳になったBが入院したのをきっかけに彼女を見舞い、Bをオランダに連れ帰る決心をします。
 目的は主に、A・Bと同居等の話を有利に進めることでした。

 深夜に病室に忍び込んだXは、ベッドに寝ていたBを、両足を引っ張って逆さ吊りにしたうえ、脇に抱えて連れ去りました。
 XはそのままBを自動車に乗せて、中国経由でオランダに行くため上海行きのフェリーに搭乗させようとしました。

 Xは国外移送略取罪(所在国外移送目的略取および誘拐罪、刑法226条)に問われました。
 この罪は、人を国外に連れ出す目的で、無理やりに連れ去るものです。
 1審・2審は同罪の成立を認め、Xの行為は、親権を盾に自己の欲求を満たそうとした一方的な行為で、親権者の子に対する裁量行為とも、正当な親権の行使とも認められないと示しています。

 一方、弁護側は、Xの行為は略取にあたらないと訴えました。
 仮にあたるとしても、親権の範囲内であり正当行為として違法性がなくなるはずだと無罪を主張します。

 最高裁は上告を棄却。
 Xは、共同親権者の1人である別居中のAのもとで平穏に暮らしていたBを、外国に連れ去る目的で、実力行使により入院中の病院から連れ出し、保護されている環境から引き離して自分の事実的支配下に置いたと指摘しました。
 このXの行為が国外移送略取罪にあたることは明らかであるとし、Xが親権者の1人でBを自分の母国に連れ帰ろうとした事実を考慮しても、その態様も悪質と言わざるを得ないと判断しました。
 以上から、Xの行為の違法性が排除されるような事情はないため、やはりXには国外移送略取罪を成立させるべきだと結論付けたのです。

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