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ピース缶爆弾事件

~最高裁昭和51年3月16日判決~

 治安を乱し、人の身体・財産に危害を加えようともくろんでいた被告人Xは、ピースの空缶で爆弾を製造し、導火線に点火して、警察官らが立番中の警視庁機動隊庁舎正門に投げつけましたが、爆発しませんでした。
 この爆弾は、ピースの空缶にダイナマイトと雷管(起爆剤)1本を詰め込み、導火線を接着剤で雷管に固定してつくられたものです。
 不発に終わった原因はこの接着方法で、導火線末端につけていた接着剤がまわりの火薬にしみ込んで火薬が湿ったり固化したため、燃焼しなくなったのです。

 Xは、爆発物使用罪(爆発物取締罰則1条)で起訴されました。
 本罪は「爆発物の使用」すなわち、「爆発の可能性がある物件を爆発すべき状態におくこと」を罰するものです。
 1審・2審とも、導火線に欠陥のあるXの爆弾は、導火線に点火して投げつけるという方法では絶対に爆発する危険性がないとの理由から、「爆発物の使用」なしとして同罪の成立を否定しました。

 これに検察官が上告したため、最高裁は原審の判決を破棄し、差戻しました。
 最高裁は、「爆発物の使用」の判断につき、物理的な爆発可能性の観点だけでなく、爆発物使用罪の立法趣旨や罪質、この条文が守ろうとしている利益(保護法益)からの観点も必要と考えました。
 さらに、爆弾の構造上・性質上の危険性と、導火線に点火して投げつける行為の危険性も考慮すべきとの基準を示しました。

 本件Xの爆弾にみられた欠陥は、基本的構造上のものではなく、爆弾本体を使用するための付属装置の欠陥に過ぎません。
 最高裁は、ここから、導火線に点火して投げつければ、爆発を起こす高度の危険性があると判断しました。
 また、本件には、

  1. 導火線に点火すれば、爆弾は爆発すべき基本的構造・性質をしていた
  2. 接着剤の使用は一般的ではないとはいえ、これを塗布したすべての場合に導火線の燃焼と雷管の爆発が妨げられるわけではない
  3. 行為当時、Xは、導火線に点火すれば確実に爆発するものと信じており、一般人ならそう考えるのが当然な状況にあった

 という3つの事情が存在したとも指摘。

 以上より、Xの行為は、結果的に爆発しなかったとしても、爆発物を爆発すべき状態に置いており、「爆発物の使用」にあたると結論付けました。

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