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警察官の発砲行為と正当行為

~福岡高裁平成7年3月23日判決~

 警察官は、相当の理由(犯人逮捕や逃走防止、人身の防護、公務執行に対する抵抗抑止)がある場合には、必要最小限の武器使用が認められています。
 その際、人に危害を加えてはいけないのが原則ですが、凶悪犯が警察官の職務執行に抵抗したり逃亡しようとしているときなどには、例外的に加害もやむなしとされています(警察官職務執行法(以下「警職法」)7条)。
 そして、これらの要件を満たした武器使用は、違法性のない「正当な職務行為」とみなされ処罰を免れるのです(刑法35条)。

 さて、今回の判例で登場する警察官Xの行為は、この「正当な職務行為」といえるでしょうか?

 傷害容疑で警察官Yに任意同行を求められたAは、ナイフでYを切りつけたうえ、警察官6名の警棒やけん銃による制止を振り切ってタクシーを奪い、逃走しました。
 この一部始終を見ていた警察官X(被告人)はAを追い、Aが突如スリップしたように停車したところで、Aを公務執行妨害等の現行犯人として逮捕しようとしました。
 これに対しAがナイフを窓越しに突き出すなど抵抗したため、XはAにけん銃を示しながら「抵抗するな。抵抗すると撃つぞ。刃物を捨てろ」と数回警告しましたが、Aは全くひるまず、車外に逃げようとナイフを繰り出して攻撃を続けました。
 Xは、このままでは自分が負傷してAが逃走し、第三者に危害が及ぶかもしれないとの危機感を持ち、Aを逮捕するためには、その右腕めがけて発砲するしか道はないと考えました。
 Xは自分の胸元に突き出されたA右腕のひじ関節部分を30㎝ほどの距離から狙い、弾丸一発を発射しました(このとき銃口は運転席床を向いていました)。
 弾丸は右上腕部を貫通して左胸部に至り、Aは出血死しました。

 1審はXの行為を正当な職務行為と認め、Xに無罪を言い渡したため、検察官役の弁護士がこれを不服として控訴しました。
 (公務員の職権濫用事件などでは、検察官が決めた不起訴等の処分に不服があれば、弁護士が検察官役を務めて刑事訴追することができます。刑事訴訟法268条「付審判請求」)

 福岡高裁は控訴を棄却。
 警察官のけん銃の使用につき、法規範(「警職法7条」、具体的なけん銃使用法等について定めた「警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範」)を満たす、必要最小限の使用にとどめるべきとの見解を示しました。
 そのうえで、本件Aは警職法7条の「凶悪犯」にあたり、警察官らの職務執行に抵抗し、逃亡しようとした経緯があること、市民に対する危険性も存在したことを検討しました。
 その結果、Xの行為は事態の悪化防止やA逮捕のために必要・相当な職務行為で、適法な武器使用だったと認められ、違法性のない「正当な職務行為」と判断されました。

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