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通行妨害の意思

~佐賀地裁平成19年5月8日判決~

 危険運転致死傷罪刑法208条の2)といえば飲酒運転による死亡・傷害事故が有名ですが、飲酒運転以外でも、自動車を危険な方法で運転して人を死傷させたときはこの罪に問われることになります。
 たとえば、積極的に通行妨害する目的をもって、重大事故につながるような危険なスピードを出しながら、走行車の直前に侵入したり、通行人・車に著しく接近したりする場合です(2項)。

 今回の事案では、被告人にこの「積極的な通行妨害の目的」があったといえるかが争われました。

 被告人Xは、A女に「男性とトラブルになっている」と相談され、A宅に出向いたところ、Aの交際相手Bの乗車しているB車を発見しました。
 Xは親交のある暴力団員に電話連絡しつつ、約15分間にわたりB車を追尾(行為I)。
 いったんB車を追い越しましたが、B車が対向車線に進出して右後方から追い越し返そうとしていたので、Xはこの追い越しを阻もうと時速約40㎞で対向車線方向に急ハンドルをきり、自分の車の前部をB車の進路直前に進入させて急接近しました。
 衝突の危険を感じたB車が右ハンドルをきると、X車とB車は進路右側の歩道方向に並進しながら擦過衝突し、B車は歩道上に乗り上げ、道路案内板の支柱に激突しました(行為II)。
 これにより、B車の運転席・助手席の2名が死亡し、後部座席の1名が重傷を負いました。

 Xは危険運転致死傷罪で起訴されました。
 これに対し弁護側は、Xの通行妨害の目的は未必的(「結果的に妨害することになるかもしれないが、それでも構わない」という程度のこと)で、積極的なものではないとして、同罪は成立しないと主張しました。

 佐賀地裁は、上記事実に関し、

  1. Xは行為Iの実行にあたり、B車が交差点を減速しながら右折した際、交差点を内回りして追い越した
  2. 行為IIで、B車が右ハンドルをきったのはXが右斜めに割り込むようにして進路をふさいだからであり、歩道方向への並走中に両車両が擦過衝突していたばかりか、B車が右前輪を縁石に乗り上げる瞬間も、両車両のドアミラー同士は擦過衝突していた(このときX車は時速約40㎞、B車は時速約60㎞)

 などの点を認定しました。
 以上の走行状況から考えて、Xが積極的に通行妨害の目的をもっていたことは明らかだとして、Xに危険運転致死傷罪を成立させました。

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