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可否同数の採決

 前回は、取締役会決議において、特別利害関係人の場合には、決議に参加できないという説明をしました。今回は、取締役会決議の結果、可否同数の場合の説明をしたいと思います。

■「議長が決する」ことは可能か?

 実務上、取締役会決議の結果、可否同数となることはほとんどありません。しかし、取締役が4名や6名等偶数のときには、同数になることが想定しうるので、考えておく必要があります。

 まず、可否同数となった場合について、定款や取締役会規則で「可否同数の場合は議長の決するところによる」と規定していることがあります。
 この点、可否同数の場合には議長が決するとすることも許されるという見解もあります。しかし、このような規定はすべきではありません。
 なぜなら、まず、条文上「取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う」(会社法369条1項)と規定しているように「過半数」が要件となっている点です。過半数とは、全体の半数より多い数の意味なので、ちょうど半分では足りず半数より1票でも多くなければなりません。

 次に、「議長が決する」とすると、最初の決議だけでなく、2回目の決議も議長がすることとなり、重複して決議に参加することになることです。会社法では369条1項で、一取締役一議決権の原則を採用しているように思われます。そうであるのに、重複して決議に参加することは、一取締役一議決権の原則に反してしまうこととなるからです。
 このような点から、「議長が決する」との記載は避けるべきです。
 最高裁判例ではありませんが、裁判例では、上述したことと同様の趣旨の判決があります。

<大阪地判昭和28年6月19日>
「可否同数の場合、議長の決した決議方法は商法260条ノ2第1項の要件を緩和した瑕疵があり、また、重ねて議決権を行使したものであるから、本件取締役会決議は当然無効と認むべきである。」

■議長がイニシアティブをとることは全く許されないのか?

 「可否同数の場合には議長が決する」とする規定は、基本的には許されません。ただし、可否同数の場合には必ず否決しなければならないかというと、必ずしもそのようなことにはなりません。議長が一度取締役会を延期して、次回に再提案するようなことであれば許されると考えるべきです。

●規則例

 出席取締役の賛否が同数の場合は、議長は決定を保留して、次回の取締役会に再び提案することができる。

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