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巨象アマゾンの横暴。最悪の場合、巨額の賠償請求の可能性?

 電子書籍や雑誌を定額で読み放題とするサービス「キンドル アンリミテッド」。鳴り物入りで日本に登場しましたが、コンテンツの提供元である出版社とのいざこざが表面化しています。

 多くの報道が見られますが、概要としてはアマゾン側が一部の書籍や写真集などを出版社との合意を待たずに配信停止としたようです。
 例えば、講談社では、ダウンロードランキング上位に食い込んでいた人気作品の複数の配信が停止され、これに対して講談社が抗議をしたところ1000を超える提供作品のすべてが配信停止となったようです(参照:講談社のニュースリリース)
 また、小学館でも写真集150点と雑誌20~30点が削除となったとみられます。

 本当のところは契約当事者しか理解ができない部分はありますが、アマゾンと出版社の間では、電子書籍がダウンロードされ、1冊の一定割合が読まれると「既読」扱いとなり、電子書籍1冊が売れた場合と同等のフィーを出版社側に支払うような契約形態であったのではないかとみられています。
 そして、アマゾンの予想に反して「既読」となった数が多かったために、アマゾンが当初想定していたコストを大きく上回ってしまい、支出の源である電子書籍の配信停止に踏み切ったのではないかと見られています。

 自由に配信を停止できるかどうかは、コンテンツを提供する出版社と配信プラットフォームを構築するアマゾンとの間の契約内容により、義務違反となるかどうかが定まります。
 したがって、契約において「自由に配信を開始、停止できる」という規定があれば、アマゾンは「お咎めなし」となります。

 通常、大手出版社であれば契約内容をチェックする法務部門があるでしょうし、自由に配信停止ができないようにする条項を設けておくのは契約におけるイロハだとも思われます。

 「配信の停止にあたっては契約当事者の合意が必要」というような規定であれば、一方的な配信停止はアマゾン側の契約における義務違反を構成し、「本来配信が継続していたら得られたであろう利益」を損害賠償請求できる可能性があります(民法415条など参照)。
 例えば、講談社で言えば、1000を超す電子書籍類が一気に配信停止となったわけですから、損害額も大きくなります。これが、複数の出版社にわたって生じている事態ですから、巨額の損害賠償となりかねません。

 もっとも、損害賠償請求ができるとしても、「今後もアマゾン経由での配信による利益を得たい」と考えた場合、キンドルクラスのプラットフォームがない状況下では、「おつきあいの可能性が残る商売相手」に訴訟手続きは避けたいもの。
 それゆえの「抗議」をした上で、訴訟手続とはせずに交渉を継続という対応としたとの予想もし得ます。簡単に言えば、アマゾンがバイイングパワーにものを言わせて「殿様商売」を押し通しているという状況です。

 いずれにせよ、アマゾンは次の点を認識すべきだと思われます。
 まず、日本の書籍・雑誌は、「手軽に読めて、すぐに捨てる」タイプのものが多いということ。例えば、雑誌、コミック、写真集、ライトノベルなどがその類です。したがって、これらを前述のようなコスト体系に落とし込む場合、費用倒れになる可能性が高くなります。
 こうした「その国独自の業界動向」をしっかり把握してからプラットフォームに落とし込むべきであったということ。

 次に、「顧客を無視したこと」です。
 今回のいざこざはコンテンツ提供元である出版社とプラットフォーマのアマゾンとの間で生じたもの。これによって、不利益を被るのは、キンドルのユーザー、つまり、アマゾンの顧客であるという点です。
 ランキング上位に食い込む作品を削除したり、力のあるコンテンツ提供元の作品を一律で削除したりすれば、キンドルユーザーの商品(=キンドルというプラットフォーム)に対する信頼は大きく損なわれます。

 いくら巨象と言っても、顧客を無視した商売は、最終的に自らの首を絞めます。今一度、「顧客の満足度を高める対応は何か?」を考えることが求められるのではないでしょうか。

credit:写真素材ぱくたそ

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