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脅迫による債権の取り立て

Q.

 ある金融業者からお金を借りたのですが、返還の期日までに返さないでいたところ、その貸金業者の従業員に暴力をふるわれて、鼻の骨を骨折し、生活費にするはずのお金を脅し取られました。お金を返さないでいたのは悪いと思いますが、暴力をふるわれるのではかないません。こうした貸金業者の従業員の行為は犯罪にならないのでしょうか。

A.

 貸金業者にしてみれば、あなたに対してお金の支払いを請求できる立場にあるので、少しくらい暴力をふるってお金を取立ててもよいと思っているのでしょう。

 しかし、裁判所は恐喝手段を用いて債権を回収したケースで、その手段が権利の正当な行使として一般的に認められる程度を超える場合は、恐喝罪刑法249条)が成立すると判断しています。

 そして、鼻の骨が折れるような暴力をふるってまで貸金を回収することは、権利の正当な行使とは到底いい難いですので、貸金業者の従業員には、恐喝罪が成立すると考えられます。

 また、殴って鼻の骨を折った行為について傷害罪も成立します(刑法204条)。

Q.

 先の貸金業者の取立てで鼻を骨折したと申し上げましたが、その取立てによる精神的なショックも非常に大きいものでした。この場合、鼻の治療費、また精神的な損害の賠償として慰謝料を請求することはできないのでしょうか。

A.

 貸金業者のこのような取立ては先にも申し上げた通り恐喝罪、傷害罪に該当し違法な取立てです。

 このような取立てで、あなたの精神や財産に損害が生じた場合はその損害の賠償としての慰謝料を請求することができます(民法709条710条)。

 そして、あなたは貸金業者の取立てにより、治療費等の財産的な損害、精神的ショックという精神的な損害を被っているのですから、貸金業者に対して損害賠償を請求することができます。仕事を休まざるをえなかったような場合には、その間の休業損害をも請求することができます。

Q.

 上記の損害賠償を請求すると、貸金業者から、まだ私に対する貸金が残っているので、これを帳消しにする代わりに支払わない、といってきました。このような貸金業者の主張は認められるのでしょうか。

A.

 このような貸金業者の主張は法律上「相殺」といって、当事者が互いにお金等を請求できる場合に、互いの債権をその対等額で消滅させることをいいます。

 例えば、山田さんが田中さんに100万円の債権を持っていて、田中さんが山田さんに70万円の債権を持っている場合に、一方が相殺の意思を表示すると70万円の債権が消滅し、山田さんが田中さんに30万円の債権を持っている状態になることをいいます。

 しかし、本ケースのような、不法行為による債権についての加害者側からの相殺の主張は禁止されています(民法509条)。これは、(1)加害者から被害者に賠償金を現実に交付させるとともに、(2)被害者が仕返しをしてその損害賠償債務と相殺するといった、不法行為の誘発を防ぐ趣旨です。

 したがって、不法行為の加害者である貸金業者からの相殺の主張は認められません。借金があるからといって泣き寝入りすることはないでしょう。

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