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国民栄誉賞の影に隠れた表彰

 4月1日に長嶋茂雄氏と松井秀喜氏の国民栄誉賞授与が発表されました。最近でも、元横綱大鵬の納谷幸喜氏やオリンピック三連覇の吉田沙保里さんが受賞するなど、何かと注目を集める国民栄誉賞ですが、同じ内閣総理大臣が授与するにもかかわらず、あまり目立たない表彰があります。

 その表彰の名は、「内閣総理大臣顕彰」。誕生したのは国民栄誉賞よりも前の1966年(昭和41年)で当時の佐藤栄作首相によって創設されました。表彰の対象者や運用については、「内閣総理大臣表彰規程」と「内閣総理大臣顕彰実施要領」によって行われています。
 表彰規定によると、以下のいずれかに該当して特に顕著な功績があり、全国民の模範と認められるものその他内閣総理大臣が表彰することを適当と認めるものに対して行なうとされています。

  1. 国の重要施策の遂行に貢献したもの
  2. 災害の防止及び災害救助に貢献したもの
  3. 道義の高揚に貢献したもの
  4. 学術及び文化の振興に貢献したもの
  5. 社会の福祉増進に貢献したもの
  6. 公共的な事業の完成に貢献したもの

 過去の受賞者には、日本人として初めて南極点に到達した第9次南極地域観測越冬隊内陸調査旅行隊(1969年)、東名高速道路や名神高速道路を完成させた日本道路公団(1969年)、よど号ハイジャック事件で人質救助に貢献した日本航空の乗員(1970年)などがおり、現在までに31人・15団体が受賞しています。最近でも、宇宙飛行士の若田光一氏(2009年)や相撲の元魁皇の古賀博之氏(2010年)が受賞しています。

 内閣総理大臣顕彰が目立たなくなってしまったのは、国民栄誉賞の創設が理由ですが、国民栄誉賞が創設されたのは、当時の基準では内閣総理大臣顕彰の受賞対象にはならないものの、どうしても賞を授与したい人がいたからです。

 その人とは、王貞治氏。通算本塁打数世界記録を達成した「世界の王」ですが、当時スポーツ選手で内閣総理大臣顕彰を受賞していたのはオリンピックの優勝者のみでプロスポーツ選手は受賞したことがありませんでした。そこで、当時の福田赳夫首相が国民栄誉賞を創設。表彰対象者を「内閣総理大臣が本表彰の目的に照らして表彰することを適当と認めるもの」と内閣総理大臣顕彰に比べると広く設定して王氏に受賞の道を開いたのでした。
 国民栄誉賞の受賞者は、現在までに20人・1団体(長嶋・松井両氏を除く)です。
 ちなみに、表彰時に授与されるものは、表彰状および盾に金一封をそえることができる(内閣総理大臣顕彰)、表彰状及び盾に記念品または金一封をそえることができる(国民栄誉賞)とされており、両者に大きな差はありません。過去の国民栄誉賞については、すべて記念品が贈呈されているそうです。

 表彰対象を広げたために、「時の首相の人気取りのために授与している」と批判されることもある国民栄誉賞に対して、表彰対象を限定したために目立たなくなってしまった内閣総理大臣顕彰。ぜひ思い出してあげてくださいね。

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