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退去の際のクリーニング代は、借家人が負担? -借地・借家に関する問題(3)-

Q.

 先日、賃貸アパートを出たのですが、退去時にクロスの張替え、畳の表替えなどで50万請求され、敷金も返ってきませんでした。契約書には「賃借人は退去時に原状回復義務を負う」と書いてありますが、これはどの程度までのことなのでしょうか?

A.

 まず、敷金とは、「不動産、特に家屋の賃貸借において、賃借人が賃料その他の債務を担保するためあらかじめ賃貸人に交付する金銭」のことです。

 賃貸借契約が終了したとき、家主は、家賃の滞納などがあればそれを差し引いて返し、そのようなことがない場合には、差し入れた敷金と同額のお金を賃借人に返さなければならないことになります。

 次に、「原状回復義務」ですが、確かに、借家人は、退去時に原状回復義務を負うこととされています(民法616条598条)。

 しかし、これはあなたが家主に無断で部屋のリフォームをしたり、建具や畳を故意に傷つけた場合にそれを元に戻す義務のことであって、年月の経過に伴い、畳や建具などが古くなったような場合はあてはまりません。年月の経過に伴う損傷による減価分は、家賃によってまかなわれているからです。

 もっとも、契約書にクリーニング代を借家人が負担する旨の条項があった場合には、当事者が合意したものとして、原則として、こうした条項も有効です。

 ただ、その内容が非常識で不公平であれば、こうした特約条項の効力も認められない場合があります(民法90条)。

 以上より、契約書にクリーニング代に関する条項がなく、あなたが家賃を滞納したり、故意に畳や建具を傷つけたりしていない限り、あなたは差し入れた敷金と同額のお金を家主から受け取ることができます。クリーニング代を支払う必要もありません。

Q.

 契約書に「敷金の2割は償却分として返還しない」と書いてありますが、この分は戻ってこないのでしょうか?

A.

 こうした特約は、償却敷金の特約と呼ばれるもので、法律上有効と考えられています。したがって、この特約のある場合、当初約束しただけの償却分を家主が敷金から差し引くことは差し支えないことになります。

Q.

 では、家主から敷金を取り戻すにはどうしたらよいでしょうか?

A.

 上のような主張を直接家主にしても、なかなか返金に応じてくれないでしょう。加えて、返還してもらえる敷金の額は通常少額ですので、訴訟をするのはかえって費用倒れになる可能性もあります。そこで、弁護士に内容証明郵便を出してもらって、弁護士に交渉してもらうという方法が最も適切と思います。

 もし、その交渉でも家主が応じないというなら、支払督促や少額訴訟を利用したり、敷金返還の調停申立を考えてみてください。

 しかし、一度部屋を明渡してしまうと、家主も簡単には敷金を返してくれませんから、明渡しが決まったら、なるべく早く家主と敷金の返還について話し合い、はっきりとした約束をしてから明渡すといった配慮は必要です。また、どの程度までが経年損傷であるかが実際に裁判で争われると、かなり微妙な問題になります。

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