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企業のリスクマネジメント ~内部告発について(2/3)

第3 法令違反による企業のリスクと内部告発制度の必要性

1 まず、前回触れた最近の企業不祥事は、それぞれ重大な顛末を迎え、法令違反による企業のリスクをまざまざと見せつけました。
 即ち、三菱自動車工業の場合30年以上もの間自動車の不具合の事実を隠蔽していたことにより、経営者辞任、ブランドイメージの失墜、売上の大幅な減少という重大な損害が生じました。日本ハムによるBSE対策事業における詐欺事件の場合も、役員が退陣に追い込まれ、売上が大幅に減少しました。雪印食品に至っては、BSE(狂牛病)関連の詐欺事件により、会社は解散に追い込まれました。京都府浅田農産での鳥インフルエンザ事件では、社長だけでなく会社まで刑事告発されました。

2 このような法令違反や不正行為によるリスクを軽減・回避するためには、まず、事業主が法令違反・不正行為によるリスクを十分に認識したうえで、社内及び社外に対して、法令遵守を明確に宣言し、周知徹底することが重要です。
 経営のトップの意識が低ければ社員に遵法精神など生まれることは期待できません。トップ自らが襟を正すことにより、従業員の法令違反や不正行為に関する意識が高まり、予防効果を期待することができるのです。

 そして、社内において法令違反や不正行為の相談窓口・通報等の内部告発制度を設けて、社内に周知徹底を図るべきです。
 確かに、法令違反や不正行為の情報を通常の報告ラインに乗せて伝達できる企業であれば、特別このような制度を設ける必要はないとの見方もあるでしょうが、やはり経営者たる者、生じる可能性のあるリスクには最大限の予防線を張っておくべきでしょう。

 前述した事案全てに共通するのは、「自社の利益を追求するために、法令を無視し、消費者を犠牲にする姿勢」ですが、社内の一人一人がそれぞれお互いにチェックしあうことにより社内の自浄作用が生まれ、法令違反や不正行為によるリスクを未然に防ぐことが可能となります。

 企業不祥事が生じた場合、社内で事実関係を調査し、計画的・戦略的に対策を講じる前に、マスコミや当局にリークされてしまうと、お粗末な対応を晒すことになって必要以上の損失が生じることになります。
 企業が社内に相談窓口・通報等の内部告発制度を備えることにより、早期に詳細な事実関係を把握し、戦略的に対策を講じてから情報を開示すれば、企業イメージ等に与える被害を最小限に食い止めることが出来るのです。

 とは言え、日本においては、まだまだ内部告発者は「密告者」というレッテルを貼られてしまう風潮が根強いですし、法令に違反しているのかどうか分明でない場合もあるでしょう。
 それゆえ、内部告発制度を設ける際には、内部告発者保護に最大限配慮したものであることが必要であり、また弁護士等の専門家にチェックしてもらえる体制を整えておく必要があります。

 そして、内部告発制度の構築と並行して、相談窓口担当者の教育・研修を実施する必要があるでしょう。この担当者の選任や教育を誤ると、制度の目的を没却し、却って企業のリスクを高めることになりますから、社内において信用・人望のある者が、客観的・公正な立場から、親身になって相談に乗る体制にしなければなりません。

3 次回は、具体的な内部告発制度の構築方法について考えていきましょう。(続く)

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