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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第625号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年 6月 4日                        第625号
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 発行部数: 19,801部(まぐまぐ 14,323部、melma! 5,478部)
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■ 目 次
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  □ 自転車をめぐる法律問題 第4回
    「自転車が走行できる場所 -2.横断編-」

  □ なっとく! 法律相談 第613回
    「パートタイマーに競業避止義務を課してもいいの?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1135.php

  □ 法律クイズ 第299回 【問題】
    「市役所が金融業者に過払い金の返還を求める?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0619.php

  □ 民事判例解説 第4回
    「損害賠償額の算定基準はいつ?」

  □ 法律クイズ 第299回 【解答】



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■ 自転車をめぐる法律問題
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 第4回「自転車が走行できる場所 -2.横断編-」

  今回は、道路の横断時に自転車が守るべき規定について話を進めていき
 ましょう。
  
  前回までの話で、軽車両である自転車は原則歩道を通行できないといい
 ました(道路交通法17条1項)。
  
  道路横断の際も同様で、自転車に乗ったままでは、歩行者信号機の設置
 された、歩行者用の横断歩道を渡ることはできません。
  普通はいったん自転車を降り、歩行者と同じ状態になってから横断歩道
 を渡ることになります(例外的に、他に通行する歩行者がいないなど、歩
 行者の通行を妨げないときに限り自転車での横断も可能。同法施行令2条1
 項、同法63条の4第2項)。
 このときに従うのは、人の形の表示がある歩行者用信号です。
  
 では、自転車走行中はどこを通って横断すべきなのでしょうか。
  
 まず優先するとされているのは、「自転車横断帯(同法2条1項4の2)」です。
  これは道路標識等で自転車横断用の場所と示されている部分をいうので
 すが…「横断歩道の横などにある、自転車の絵が描かれたレーン」と言っ
 た方がわかりやすいでしょうか。
  道路交通法によると、付近に自転車横断帯があれば、それを使って横断
 しなければなりません(63条の6、63条の7第1項)。
  
  通常、自転車横断帯には、歩行者・自転車専用信号(「歩行者・自転車
 専用」と示された人の形の表示がある信号。道路交通法施行令2条1項4号)
 が併せて設置されていますから、横断時にはこの信号に従います。
  
  自転車横断帯がなく、歩行者・自転車専用信号だけがあるような場合も、
 横断時に見るべきは歩行者・自転車専用信号です。
  つまり、どこを渡るにしても、歩行者・自転車専用信号が確認できれば、
 できる限りそちらに従うということです。
  
  そして、周囲に自転車横断帯も歩行者・自転車専用信号も確認できない
 場合は、車道を走ってきた自転車は車両用の一般信号に従いつつそのまま
 車道を進み、歩道を走ってきた自転車は歩行者用信号に従い、横断歩道を
 使って(上記のとおり、その際は降りるのが原則)横断することになりま
 す。
  
  現在の交通ルールは以上のとおりですが、今後ルールが見直される可能
 性はあります。
  たとえば、警察庁交通局は、平成23年10月25日通達で、自転車歩道通行
 可の場所をつなぐ自転車横断帯を撤去する意向を示しました。
  従来、車道走行中の自転車が、交差点で横断歩道併設の自転車横断帯を
 利用して直進を試みる場合、いったん車道の停止線を越えて左折し、また
 すぐに右に方向転換して自転車横断帯を渡るという、変な動きをとらねば
 なりませんでした。
  こうした自転車の動きは周囲から読みづらく、巻き込み事故等の危険性
 も高かったため、自転車横断帯の無理な優先に対しては批判が多かったの
 です。
  
 これが実施されると、自転車が
 
 車道→自転車横断帯→自転車通行可の歩道
 
 という動きをすることはなくなり、
 
 車道→直進→車道
 
 に絞られるため、より安全な横断が実現するはずです。



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■ なっとく!法律相談 第613回
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 「パートタイマーに競業避止義務を課してもいいの?」

 □相談□

  現在パートでスーパーのレジをしています。このスーパーの契約書に同
 業者の仕事は禁止と記載されています。もし同業者の仕事をしたら解雇さ
 れても仕方ないのでしょうか?
 
                          (40代:女性)


 □回答□

  同業他社で就業しない義務を競業避止義務といいます。競業避止義務は、
 就業規則や雇用契約書において規定されることが多いです。競業避止義務
 違反は解雇とする旨の条項が無い場合には、競業避止義務に反したから即
 刻解雇ということはないと思われます。仮に解雇となった場合には、訴訟
 等の方法で雇い主に対してパートタイム従業員であることの地位確認請求
 をすることになります。

  競業避止義務は、会社のノウハウや人材などが同業他社に漏れることに
 よって会社が不利益を被ることを防ぐという趣旨で設けられるものです。
 競業避止義務は被用者の職業選択の自由(憲法22条1項)を制約するもので
 すので、公序良俗(民法90条)に反するものであってはなりません。裁判例
 において公序良俗に反するかどうかは、(1)従業員の地位・業務の性質、
 (2)ノウハウ等の要保護性、(3)勤続年数、(4)競業避止義務が課される期
 間、(5)代償措置の有無等を考慮要素として判断されることが多いようで
 す。
  例えば、管理職で、高度の専門性を有するノウハウに触れていて、十分
 な報酬が支払われていたような場合には、公序良俗違反は認められにくい
 でしょう。他方、平社員で権限も低く、触れていた情報も特段保護に値し
 ないものであり、基本給以外に何ら特別の手当も支払われていない場合に
 は公序良俗違反は認められやすいでしょう。

  相談者の場合、パートタイム従業員ということですので、上記例でいう
 と後者の場合にあたるでしょう。ですので、相談者の勤めておられるスー
 パーのパートタイム従業員の雇用契約にある競業避止義務は公序良俗に反
 して無効となる可能性が高いといえます。無効と認められたならば、上記
 地位確認請求は認められるでしょう。
  したがって、仮に同業者の仕事をしていたことがスーパーの知るところ
 となり、解雇の話が出たとしても、上記の説明をすることで回避すること
 ができる可能性があります。ただ、実際に解雇されてしまった場合に、地
 位の確認請求をするのは費用も労力も要することですので、対応について
 は考える必要があるでしょう。


  [関連情報]
  ・同業他社への転職
   http://www.hou-nattoku.com/shokuba/taisyoku5.php



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■ 法律クイズ 第299回 【問題】
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 「市役所が金融業者に過払い金の返還を求める?」

  A市は無資力で税金を払うことができないBさんから税金を徴収するため
 に、Bさんが金融業者Cに対して有している過払い金の返還請求(権)に目を
 付けました。

  A市はBさんに代わってCに対して過払い金返還請求をすることができる
 でしょうか?

 1. できる
 2. できない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 民事判例解説
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  第4回「損害賠償額の算定基準はいつ?」
     ~最高裁昭和37年11月16日判決~

  ものの価値は一定ではありません。
  時間の経過とともに下落するものもあれば、高騰するものもあります。
  たとえば土地などは、バブルなどの景況や、周辺開発などの環境変化に
 合わせて大きく値が変わります。
  
  では、土地を処分した当時と裁判の時点で地価が大きく異なる場合、そ
 の土地の価額はどちらに合わせて算定すればよいのでしょうか?
  
  
  X(原告)は、自分が所有していた40坪の土地Aを2万円でY(被告)に売
 却し、登記も移転しました。
  このときXとYは、当契約の3年経過後から1年以内に、XがAを買い戻せる
 という特約を付けました。
  
  当契約から3年10か月経過後、Xは、Y方に2万円を持参し、前述の特約に
 よりAを買い戻す意思を示しましたが、Yはこれを拒否。
  怒ったXは所有権移転登記を求めて訴訟を起こし、1審で勝訴しました
 (不動産登記法60条)。
  
  しかし、Yは強硬手段に出ます。
 なんと、1審判決の出る数か月前、まだ審議段階にあるAを第三者Pに売却
 して、登記も移してしまったのです!
  
  これでもう土地Aを取得できなくなったXは、2審で損害賠償請求に主張
 を変え(民法415条)、「少なくとも1坪2万円」というAの時価評価を参考
 に、40坪×2万円の計80万円をYに請求することにしました。
  
  2審の鑑定によれば、X・Y間の売買契約当初に77万6910円だったAの価格
 は、2審の口頭弁論終結ころには108万7500円に膨れ上がっていました。
  2審は、Yが、AをPに処分した時点でその後の地価上昇を予見できたと認
 定し、Xの80万円の請求を正当と判断しました。
  
 これを不服としてYが上告しましたが、最高裁は上告を棄却しました。
  
  最高裁はまず、債権者Xが「債務者Yがもはや債務(XにAを買い戻させる
 こと)を履行できなくなった」として請求できる損害賠償額は、原則その
 「処分当時の目的物の時価」とすると示しました。
  
  しかし、本件のように、目的物であるAの価格がなお上昇中、というよ
 うな特別事情がある場合なら話は別です。
  Yが債務を履行不能にした(AをPに売った)時点で、この特別事情を知っ
 ていた/知り得た場合は、Xの請求できる損害賠償額は、そこからさらに
 高騰した「現在の時価」になるとしました。
  
  なぜなら、Yの債務不履行がなければ、Xはその高騰した価格のAを現に
 保有できていたはずだからです。
  例外的に「XがAを入手していれば、きっと現在の時価まで上がる前に処
 分していた」と予想できる場合は、賠償額を「現在の時価」に合わせるべ
 きではありませんが、こうした予想がたたない限りは、この高騰した「現
 在の時価」を算定基準とするのが適切と裁判所は考えました。
  
 なお、このとき、XがAを処分するであろうと予想できる必要はありません。
 別にXがAを処分して換金する予定がなくてもよいのです。
  
  以上の基準に照らして考えると、Aの地価高騰という事情があり、YはA
 処分時にこれを知り得たのだから、原判決の判断は正しいと結論付けまし
 た。



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■ 法律クイズ 第299回 【解答】
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 「市役所が金融業者に過払い金の返還を求める?」

 □解答□

 1. できる

  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使する
 ことができます(民法423条1項)。
  つまり、債権者は一定の条件のもとで債務者の持っている権利を債務者
 自身に代わって行使することができるということです。
  本問のBさんは無資力ということですので、A市はBさんに代わって、Bさ
 んがCに対して有する過払い金返還請求権を行使することができます。
  実際、このように自治体が過払い金返還請求権を代位行使する事例が増
 えてきているといわれています。



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