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公開質問状に対するNTT東西からの回答

 2005年1月12日、「法、納得!どっとこむ」を運営するNPO法人リーガルセキュリティ倶楽部より、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)代表取締役社長 三浦惺氏および西日本電信電話株式会社(NTT西日本)代表取締役社長 森下俊三氏宛に、読者の皆さまからのご意見とともに「公開質問状」を送付いたしました。
 これに対し、2005年1月26日にNTT東西のお客様相談センターより回答をいただきましたので、ご報告を兼ねて以下に掲載いたします。(双方の回答を比較しやすいように編集しています。原文は下のリンクからご覧ください)


質問事項1への回答比較

質問1. 2,000人近いの投票者の約7割が施設設置負担金を廃止するのであれば、既払い者に対する何らかの優遇措置が必要であると回答した結果(別紙資料参照)について、率直なご感想とご意見をお聞かせください。

NTT東日本からの回答

 本年3月に実施予定の施設設置負担金の値下げは、電話加入数が減少に転じる中で、電話の早期普及のための設備資金の調達手段としての意義が低下してきていること等を背景に、昨年10月に公表された情報通信審議会答申の内容を踏まえて、現在の電話加入権取引市場の売買価格に直接影響を与えない範囲内で実施することとしたものであります。したがって、ご質問の中にある施設設置負担金の廃止については、現時点で決定したものではなく、それを前提としたアンケート調査結果に対する感想、意見についてのコメントはいたしかねます。

NTT西日本からの回答

 施設設置負担金は、加入電話などの新規ご契約の際にお支払いいただく料金の一つです。
 電話設備を建設するには多額の資金が必要となりますが、お客様よりお支払いいただきました施設設置負担金によりこの資金の一部を賄うことで、円滑な資金調達が可能となり、電話網の構築、安定的なサービス提供に役立ててまいりました。この施設設置負担金については、お客さま宅から弊社の市内交換ビルまでの区間に敷設する電話設備(ケーブル、電柱など)の建設費用に全額充当しているところであり、これによりお客さまに月々お支払いいただく基本料金を割安な水準とさせていただいているところでございます。
 今回の施設設置負担金の見直しは、総務省情報通信審議会の答申を踏まえて、電話加入数が減少に転じる中で、電話の早期普及のための設備資金の調達手段としての意義が低下してきていること等を背景に半額に値下げすることとしたものであります。
 なお、今後の見直しについては、お客様のご理解を得つつ、電話加入権市場の動向や関連諸制度の見直しとの関係を見極めて、検討していく考えであり、施設設置負担金の廃止を前提としたアンケート調査結果に対する感想、意見についてのコメントは差し控えたいと存じます。

質問事項2への回答比較

質問2. 今回、施設設置負担金の引き下げとともに、固定電話の基本料の見直し等を打ち出しておられますが、これとは別に施設設置負担金の引き下げ前の加入者に対し、何らかの優遇措置(基本料の引き下げ、施設設置負担金相当額の返金、施設設置負担金相当額の株式付与等)をとられるお考えはありますか。

NTT東日本からの回答

 上述のとおり、今回の施設設置負担金の値下げは、その意義が低下してきていること等を背景に実施するものであります。施設設置負担金は、これまでもその時代の物価水準や市場環境にあわせて、幾度かの料金改定を実施してきており、これからも状況の変化に対応した料金で提供していく考えであります。したがって、ご質問のように値下げ前のお客様だけに限定した優遇措置を講じる考えはございませんのでご理解を賜りますようお願い申し上げます。

NTT西日本からの回答

 今回の施設設置負担金の値下げにより、今までご契約いただいたお客さまと3月移行にご契約いただくお客さまとでは施設設置負担金のお支払額に差が生じますが、料金の水準は物価の変動や市場環境の変化などに応じて見直していくものであり、今回の料金変更により、お客さまのご負担額に変動が生じることについても、何とぞご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
 また、施設設置負担金の料金については、昭和27年(日本電信電話公社発足)以降、値上げを含めて5回の料金改定を実施してまいりましたが、これまでお支払額の差に対して特段の措置等は行ってきておりません。
 なお、本年1月1日より弊社経常利益にほぼ匹敵する年間約800億円にも及ぶ基本料等の大幅な値下げを実施しているところであり、格別のご理解を賜りますようお願いいたします。

質問事項3への回答比較

質問3. ライトプランの加算額の累計額が施設設置負担金に達するまでに12年(ともに引き下げ後の場合)かかる計算ですが、今後さらに施設設置負担金及び加算額の引き下げが予想される中、施設設置負担金を一括で支払う利用者にとっては不公平感が強いと思われます。この点についていかがお考えですか。

NTT東日本からの回答

 弊社では、新規契約時において、施設設置負担金を一括でお支払いいただくか、又はライトプランをご契約いただくかいずれかをお客様に選択していただいております。お客様におかれましては、ご自身のご利用期間や今後施設設置負担金及びライトプラン加算額の料金変更がありうることを勘案されたうえで、プランを選択していただくことになります。したがって、ご質問のように施設設置負担金を一括でお支払いになるお客様が一律に不公平であるとは言えないのではないかと考えております。

NTT西日本からの回答

 弊社では、加入電話などの新規ご契約の際に、施設設置負担金を一括でお支払いいただくか、又はライトプランをご契約いただくかいずれかをお客様に選択していただいております。したがって、お客様におかれましては、ご自身のご利用期間等を勘案されたうえで、プランを選択していただくことになっており、ご質問のように施設設置負担金を一括でお支払いになるお客様にとって一律に不公平であるとは言えないのではないかと考えております。

質問事項4への回答比較

質問4. 電話加入権に実質的な財産的価値を認めている社会実態が形成されてきたことについて、例えば、電話加入権の取引を禁止したり、非減価償却資産とする法制に反対するなどの対応も取ることもできたと思いますが、こうした点をいわば黙認してきたのはなぜですか。また、施設設置負担金の引き下げ・廃止にともなう既存制度との不整合について、その是正を政府等に働きかけを行う予定はありますか。

NTT東日本からの回答

 電話加入権については、法令によって、譲渡や質権の設定が認められているほか、非減価償却資産として取り扱う等の諸制度が設けられています。これらの諸制度は、法令制定時にはその時代の社会実態を背景として、それぞれその必要性に基づいて設けられたものと考えますが、その後、市場環境等が大きく変化してきており、見直しの必要性が高まっているものと考えております。したがって、弊社といたしましても、情報通信審議会のヒアリングやパブリックコメント等の場で意見を申し上げてきたところであり、昨年10月に公表された情報通信審議会答申には、政府に対し、関連法令の改正等必要な措置を検討するように求める内容が盛り込まれたところです。

NTT西日本からの回答

 電話加入権とは、「加入電話契約者が加入電話契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利」(弊社電話サービス契約約款21条)であります。この権利により、全国いつでもどこでも電話サービスをご利用いただくことができます。
 電話加入権については、取引市場における需給状況により、財産的価値が定まり、その価値を前提に法令によって、質権の設定が認められているほか、非減価償却資産として取り扱う等の諸制度が設けられています。これらの諸制度は、法令制定時にはその時代の社会実態を背景として、それぞれその必要性に基づいて設けられたものと考えますが、その後、市場環境等が大きく変化してきており、関係方面での見直しの必要性が高まってきているものと考えております。この電話加入権の取引については旧公衆電気通信法において譲渡が認められていたことを前提として、純然たる民民間において実施されておりますが、同じく一企業である弊社が、こうした取引を禁止することは不可能です。
 また、弊社としては、政府に税法上の扱いについて必要な措置を講じていただくよう、総務省情報通信審議会の公開ヒアリングの席上等において公式にお願いしているところであり、このような弊社の意見等も踏まえて昨年10月に公表された総務省情報通信審議会の答申においても、政府が税法上の扱いについて必要な措置を検討するように求める内容が盛り込まれたところであります。
 なお、携帯電話の新規加入料が廃止された際においても、当時のNTTから損金算入を認める等の税制上の措置を要望し、それが実現されたことから、弊社としては、同様の措置が認められるよう、継続して要望していく考えです。

質問事項5への回答比較

質問5. 自由意見の中には、「施設設置負担金相当額の返金を求める集団訴訟を起こしたい(提起された場合は参加したい)」との意見もありました。漠然とした質問で恐縮ですが、仮にこのような訴訟が提起された場合、どのような対応をお考えでしょうか。

NTT東日本からの回答

 弊社は、今回の施設設置負担金の値下げにあたって、値下げの趣旨や施設設置負担金の性格等、お客様に十分にご理解いただけるように取り組んでいく考えであります。
 なお、「仮に返還を求める訴訟が提起された場合」とのご質問ですが、仮定のご質問に対する回答は控えさせていただきます。

※施設設置負担金に関するご説明資料を(別紙)のとおり添付させていただきましたのでご参考としていただきますようお願いいたします。

NTT西日本からの回答

 弊社は、今回の施設設置負担金の見直しにあたり、算定根拠を含め事前の情報開示を行うとともに、お客様のご理解を得られるよう、電話料金の請求書等に同封するハローインフォメーションや新聞広告等を用いてお客さまへの周知を図ることにより、お客さまへの適切な説明に努めているところであり、今後も、お客さまにより一層のご理解をいただけるよう取り組んでまいります。
 ご質問にあります集団訴訟の提起につきましては弊社から意見を申し上げる立場にございません。
 なお、過去の同様の訴訟案件として、携帯電話の新規加入料廃止時及びINSネット64・ライトの提供時において、施設設置負担金の返還を求めてきた訴訟がございますが、いずれの場合も最高裁において棄却されていることを付言しておきます。

(参考)
 携帯電話の新規加入料廃止時における施設設置負担金の返還訴訟【最高裁判所平成10年(オ)第1392号】
 INSネット64・ライトの提供時における施設設置負担金の返還訴訟【最高裁判所平成11年(オ)第567号】

■今回のNTTの施設設置負担金(電話加入権料)廃止問題は、本法人の設立趣旨を踏まえ、法律の建前と市民感覚のかい離が甚だしいテーマについて読者と一緒に掘り下げて考えてみようという企画「皆で考えよう、法の建前と現実」の第2回テーマとして実施されたものです。

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