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通勤途中の事故

Q.

 この間友人が、通勤のため、歩いていると横断歩道で左折してきた車にあたり1ヶ月ほど入院しなければならない大ケガをしたそうです。会社で事故が起きた場合は、労災保険がおりるときいたのですが、通勤中の事故についても、賃金等が労災保険で補償されるのでしょうか。

A.

 会社で事故が起こった場合や、仕事を原因とする病気にかかった場合、会社に対して労働災害補償を請求できます。もっとも、労災保険制度が整備されている現在の制度のもとでは、労災保険がおりるということになります。

 さて、ご相談の場合ですと、まず通勤途中の事故による大ケガが労働災害として認定を受けることができるかが問題となります。

 まず、通勤の途中で使用者のために業務を行っていて事故に遭ったような場合や、外勤など業務と通勤の区別が困難な場合には、業務上通勤災害として、通常の労災としての保護が受けられます。つまり、労災保険上の各補償給付、解雇制限(労働基準法19条)、3日目までの使用者による直接の休業補償(同法76条)が受けられます。

 次に、以上のような事情がない場合でも、労働者が、(1)「就業に関し」、(2)「住居と就業の場所との間を」、(3)「合理的な経路および方法により往復」していたと認定されれば、保護通勤災害として労災保険の給付が受けられます(労働者災害補償保険法7条1項2号、2項)。
 もっとも、保護通勤災害の場合には、業務上通勤災害の場合と異なり、解雇制限などの労働基準法上の労働災害に関する規定は適用されません。そのため、休業補償は4日目からしか支給されず(労働者災害補償保険法14条1項)、長期間休業すると解雇になるおそれがあります。

 以上から、通勤途上での事故であれば、友人の方のケガは労災保険で補償されると考えられます。

 しかし、友人の方が通勤経路を外れたり、通勤の途中で通勤をいったん中断して通勤と関係ない行為をした場合には、労災と認められません(労働者災害補償保険法7条3項)。例えば、帰宅途中に飲み屋に寄り、その帰りに事故に遭ったような場合には労災と認められないわけです。
 もっとも、経路上の店でタバコや雑誌を買うなど、ごく短時間の経路の逸脱や、夕食の買い物を途中のスーパーでする場合のように、経路の逸脱や通勤の中断が「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のもの」といえる場合には、労災と認められる可能性があります。

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