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消費生活(1)

未成年者「単独でできること・できないこと」の原則

 第1回と第2回では、契約と消費生活に関する問題を見ていきます。
 ご存知の方も多いと思いますが、今回は、未成年者が契約など(法律行為)をする場合の原則をおさらいしましょう。ちょっと抽象的なところもありますが、原則について知っておくことは自分で具体的な事例を考えるとき欠かせないことです。

注:
条文は逐一あげるとかえって分かりにくいため、重要なものだけ記しています。法律用語についても、イメージを持っていただきやすいように他の言葉に置きかえたところがあります。

 未成年者とは、20歳未満の者をいいます(民法3条参照)。
 例えば大学生などで、社会生活上充分な判断力を持っている人でも、20歳未満であれば、民法の行為能力制度(未成年者としての規定)が適用されます。行為能力制度とは、一般的に能力がいまだ不十分と思われる者を定型化して、法律行為が円満に行われるよう保護を図ったものだからです。不十分な部分については保護者が補うこと、具体的には、契約を結ぶときに保護者の同意を必要としたり、同意なくしてしまった契約を取り消せるようにしたりしています。

未成年者が法律行為をするときは、そんな具合で原則として保護者の同意が必要です。

Q.

 でも、いちいち親の同意を得て物をもらったり買ったりしている学生はいませんよ。これも取り消されることがあるんですか?

A.

 未成年者が保護者の同意不要でできる場合が3つあるのです。それらにあたれば同意を得ていないからといって取り消すことはできません。

 第1は、単に権利を得たり義務を免れるような行為をした場合(民法4条1項但書)。例えば、プレゼントをもらったり(贈与を受ける)、借りていたお金を返さなくていい(債務の免除)と許してもらうような場合です。このような行為は別に未成年者の得になっても損になる恐れはないので、単独でできます。
 第2に、保護者が目的を定めて処分を許した財産を目的にしたがって処分するような場合(5条)。例えば、本を買うためにもらったお金で本を買ったりする場合です。お小遣いも自由に使えます。

 第3に、ある営業について、保護者に許可をもらっている場合(6条1項)。未成年でも家業を継いだり企業を経営している場合、その営業については一人前として扱ってもらえないと、本人も相手方も不便でならないからです。

具体的事例を見ていきましょう

さて、どうでしょう。少しはイメージを持っていただけましたか?

 このような法律の規定を現実に主張する事態までには発展しないのが普通かもしれません。そして、それが望ましいことでもあります。
 しかし、必要なときはこういう手段も取れるんだ、と知っておくことで、無用なトラブルを避けられ、相手との話し合いも有利に進めることが期待できます。また、何よりも、取るべき選択肢が拡がることで、追い詰められた気持ちにならなくて済み、自分が解決すべき問題点をはっきりさせることができます。これこそが、法律知識のもたらしてくれる、何よりのプレゼントではないでしょうか?
 来週からもこの姿勢で身近な法律問題について学んでいきたいと思います。

よく聞く法律用語

→ 取消し
民法4条120条

 普段よく使われる言葉ですが、民法上はいつでも誰でもできるわけではありません。取消権を持つ人が、一定の期間内に行使しなければならないのです。相手方の立場が不安定になるからです。
 取り消された法律行為は、最初からなかったことになります(遡及的無効、121条)。売買なら、払ったお金を返してもらい、こちらも商品を返します。払うことに決まっていたお金についても払う義務がなくなります。

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