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企業のリスクマネジメント ~セクハラについて(1/4)

第1 総論 ~セクハラはなくならない?~

1 平成11年4月、セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」と言います。)に対する事業主の配慮義務が規定された改正男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います。)が施行されました。
 これを機に、企業、教育機関、官庁などにおいてセクハラ対策の動きが徐々に見られるようになりましたが、相変わらずセクハラ問題は新聞・雑誌に頻繁に取り上げられ、訴訟沙汰に発展するケースも増加しています。当職のもとにもセクハラ被害の相談は後を絶ちません。
 まずは、実際の裁判や相談で問題となった具体的な事例から見ていきましょう。思い当たる場合は要注意です。

  1. ある会社の男性会長が、離婚して二児を養うために働いていた女性従業員を食事に誘い、「17や18の小娘やないから分かるでしょう。」と言って太股を触った。
  2. ある会社の代表者が女性従業員に対して「処女か」などと何度も聞き、性的関係を求める発言を繰り返して退職に追いやった。
  3. 上司が部下の女性社員を個別的に食事やデートに誘ったり、業務にかこつけて個人面談をした。
  4. 上司が部下の女性社員と恋愛関係にあり、仕事のシフトや人事面で優遇するなどのえこひいきをした。
  5. 男性社員が昼休みに週刊誌のヌード写真を他の女性社員の目に触れる状態で眺めていた。
  6. 独身の女性社員が社内で妻子ある男性社員と人目もはばからず交際し、社内や取引先で噂になった。

 1. の会長及び 2. の代表者の行為には違法性が認められ不法行為に基づく損害賠償義務が生じます。 3. 及び 4. の上司と 5. の男性社員及び 6. の女性社員は、懲戒の対象となり得るでしょう。
 いずれの場合も、周囲でセクハラが起こっているのに会社も何の対応も採っていない場合には、会社側にも民事責任が生じる可能性があります。

2 近時セクハラ問題が増加している理由は、「セクハラ」いう概念が人々の間にかなり浸透して権利意識が掘り起こされた反面、事業主等の側でセクハラ問題についての本質的な理解が不十分であることが背景にあると考えられます。
 特に日本企業の大部分を占める中小企業においては、男性中心の社風・体制が根強く、また社内の権力が集中しやすく歯止めが効きにくいことから、セクハラ対策が遅れているようです。
 そこで、次回以降、本稿を読まれている企業経営者、管理職の方々に、セクハラとは何か正確に把握してもらった上で、なぜセクハラ対策が必要なのか今一度考えて頂き、具体的にどのようにセクハラ対策をしたらよいのかについて理解して頂こうと思います。

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