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企業のリスクマネジメント ~セクハラについて(2/4)

第2 セクシャル・ハラスメントとは?

1 改正男女雇用機会均等法(以下「均等法」と言います。)第21条によると、

「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」

と定義されています。つまり、以下の2つの場合が規定されています。

  1. 「肉体関係を持ったら昇進させる。」とか「二人で飲みに行かなければ役職から外す。」など、雇用上の何らかの利益の代償あるいは対価として性的要求が行われる場合(これを「対価型」と呼びます。)
  2. 性的体験を尋ねたり、雑誌のヌード写真を見せたり、意味もなく体を触ったりするなど、性的言動により相手方の職場環境の悪化を招来する場合(これを「環境型」と呼びます。)

2 東京都労働経済局発行にかかる『職場におけるセクシャル・ハラスメント防止マニュアル』によれば、次の場合が挙げられています。均等法に規定されている上記 1. と 2. の中間です。

  1. 上司や得意先という立場を利用して性的要求を行うなど、明確な雇用上の代償・対価を示さないものの、相手方に雇用条件や職務遂行への影響を予想させる職務上の地位・立場を利用して性的要求が行われる場合(これを「地位利用型」と呼びます。)

3 なお、ここで言う「職場」とは労働者が業務を遂行する場所をいい、通常就業している場所以外であっても労働者が業務を遂行する場所であれば該当します。つまり、取引先の事務所や打ち合わせをするための喫茶店、顧客の自宅等であっても該当する可能性がありますので注意が必要です。

4 セクハラが問題とされる場合に、当該行為がセクハラか否かを認定する基準としては、当該言動が相手方の意に反するものかどうか、そして、相手方の職場における生活に関して看過し難い程度の不利益や被害が生じ、又は生じる蓋然性があるかどうかが重視されます。
 ここで「相手方の意に反する言動」とは、相手方が望まない言動であって不快なものを言います。権限を持つ立場にある加害者に逆ったり、職場の雰囲気に異を唱えると仕事に影響があるのではないかと恐れて望まない言動を受け入れる場合もありますので、仮に相手方が応じたり、異を唱えなかったとしてもセクハラに該当することがあります。

5 訴訟においては、当該性的言動が不法行為と認定されるかどうかは、当該言動の具体的態様、言動の目的、被害者に与えた不快感の程度、加害行為の場所・時刻、行為者と被害者の関係、加害者・被害者の対応等の諸事情を総合的に考慮して判断されます。
 当該言動が被害者に対する性的意味を有し社会的通念上許容される限度を超えるもので被害者の性的自由または人格権に対する侵害が認められる場合には、違法性が認定されることになります。

 1. 対価型の場合は、昇進させなかったり解雇されたりといった労働上の不利益・被害があるため、相手方の意に反するかどうかの認定は比較的明確にできますが、 2. 環境型や 3. 地位利用型の場合、判断は困難です。

 例えば、性的言動の態様としては、単に胸や臀部を見るに止まるか、ヌードポスターを貼るなどの行為をするか、性的な冗談やからかいを行うなど直接の発言を伴うか、身体への不必要な接触が行われるか、性的関係の強要まで行われるかなどが考慮されますし、性的言動がその場限りか長期間常習的に行われていたかは重要なファクターです。
 また、性的言動が行われた場所が公衆の面前よりは逃げ場のない密室のほうがより認定されやすいと言えます。
 さらに加害者が無意識であるか意識的であるかも重要であり、その意味で被害者が抗議したにもかかわらず性的言動が継続する場合などは認定されやすいでしょう。

6 今回、セクハラとは何か正確に理解して頂けたと思いますので、次回はセクハラ対策の必要性について考えていきます。

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