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税金支払いの将来への繰り延べ2

 前回に引き続き、税金の支払いを将来に繰り延べる節税方法について、もうすこし詳しく説明したいと思います。

 税金の支払いの将来への繰り延べ、言いかえれば節税額の先取りの具体的ケースをいくつかご紹介したいと思います。

  1. 未払金の計上
    •  給料の締め日が毎月15日で、給料の支払日が25日という会社の場合、その会社が3月末決算だとすると、その期の最後の給料の支払日は3月25日です。しかし、締め日は3月15日ですので、3月16日から3月31日まで従業員が働いた部分についての支払いは4月25日になります。この15日分の給料は3月分として未払計上して損金に算入することが可能です。
  2. 短期前払費用
    •  通常、法人税の計算をするときに、事務所や店舗の家賃などの経費については3月決算法人の場合その実際の支払いに関わらず4月分から3月分の12ヶ月分が損金に算入されます。しかし例外として1年以内の前払いの場合には損金算入を認めています。つまり3月末に翌年1年分の家賃を前払いするとその年については24ヶ月分の家賃の損金算入が可能となるわけです。もし2年分前払いすると1年分だけではなく全額が損金の算入ができないので注意が必要です。
  3. 不良在庫、使わない固定資産の処分
    •  倉庫に残っている売れる見込みの無い在庫や、使われなくなった機械などの固定資産をバーゲンでたたき売るか廃棄処分にしてしまい損を出すこともひとつの税の繰り延べになります。在庫は実際に売れた時に売上原価として損金になり、固定資産も減価償却によって徐々に損金計上されてゆきますので廃棄処分によって損金算入のタイミングを早めることになります。

 お分かりいただけたと思いますが上記のいずれも長い目で見れば損金算入される金額は同じですが、税金の支払うタイミングが後ろに延びています。また、上記1、3の場合は実際にお金は出てゆきませんが、2の場合は出金が伴います。

 次に、生命保険を使って人為的に税金の支払いを繰り延べる方法を検討してみます。
 生命保険の種類には法人向けに節税商品として設計されているものがあります。代表的なものとしては逓増定期保険があげられます。支払った保険料が全額損金に算入され、しかも5年後から10年後に解約すると支払った保険料の80%から90%の返戻金を受け取れます。税率を40%とすると国に利益の40%を税金として支払う代わりに保険会社に利益の10%から20%を儲けさせると考える事ができます。ただし、解約による返戻金は益金(収益)として課税対象となります。つまりこの保険契約によって、税金の支払いを5年から10年間先に繰り延べたことになります。表1が具体例です。

<表1>
 支払った保険料保険料の累計解約返戻金節税額
X年10,00010,000 4,000
X1年10,00020,000 4,000
X2年10,00030,000 4,000
X3年10,00040,000 4,000
X4年10,00050,00040,0004,000
50,000 40,00020,000

 表1は、毎年10,000ずつX年からX4年まで5年間総額50,000の保険料を支払い40,000の解約返戻金を受け取ったケースです。5年間で50,000×40%=20,000の節税ができたことになります。同時に保険会社を10,000儲けさせています。

 この節税商品を買うことによっていくらお金が手元に残ったかを考えてみましょう。
 支払った保険料が50,000で20,000の節税ができたということは、実質的に支払った保険料は50,000-20,000=30,000ということです。30,000の保険料で40,000の解約返戻金があったということは40,000-30,000=10,000手元の現金が増えます。

 注意しないといけないのは、これは向こう5年間毎期黒字であることが前提となります。赤字になった場合は保険会社だけが儲かることになります。
 もうひとつの注意点は、解約返戻金の40,000が課税の対象になることです。つまり5年間税金の支払いが繰り延べられたわけです。放っておくと、X4年には40,000×40%=16,000の税金を支払わないといけません。こうなると結果的に10,0000-16,000=△6,000も手元のお金を失ってしまうことになります。通常は、X4年に役員退職金を40,000支払うなどして黒字を消してしまいます。うまくいけば30,000の原資で40,000の役員退職金の積立ができたことになります。

 このように節税商品というのは、うまく会社の状況にはまれば非常に有効ですが、このケースで赤字になってしまった場合のようにリスクも覚悟する必要があります。(つづく)

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