サイト内検索:

「知らなきゃ損する!面白法律講座」第618号

                      http://www.hou-nattoku.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年 4月 9日                        第618号
───────────────────────────────────
 発行部数: 19,750部(まぐまぐ 14,270部、melma! 5,480部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 目 次
───────────────────────────────────

  □ なっとく! 法律相談 第606回
    「DV被害者からの保護命令取消申立」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1119.php

  □ 法律クイズ 第292回 【問題】
    「未成年者を代理人に任命できる?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0603.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第百六回 「放火前の避難提案と故意」

  □ 法律用語 「外交官特権」

  □ 法律クイズ 第292回 【解答】



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ なっとく!法律相談 第606回
───────────────────────────────────

 「DV被害者からの保護命令取消申立」

 □相談□

  保護命令を申立て受理されました。現在は、離婚調停が順調に進んでい
 ます。そこで、保護命令の取下げまたは、解除を考えています。手続きは
 申立て裁判所ですか?警察署ですか?
 
                          (30代:女性)


 □回答□

  保護命令とは配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を
 受けた被害者が、配偶者からの身体に対する暴力により、その生命又は身
 体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、裁判所が被害者からの申
 立てにより、配偶者に対して発する命令のことです。
  保護命令には、(1)被害者への接近禁止命令、(2)被害者への電話等
 禁止命令、(3)被害者の同居の子への接近禁止命令、(4)被害者の親族
 等への接近禁止命令、(5)被害者と共に生活の本拠としている住居から
 の退去命令、の5つの類型があります。

  保護命令の裁判が確定した場合でも、その必要性がなくなった場合は効
 力を継続させる意味がないので、保護命令の取消しの制度が認められてい
 ます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律17条)。

  被害者が取消しの申立てをした場合は、無条件で取り消されます。なお、
 加害者が取消しの申立てをした場合は、一定の条件のもとに取消が認めら
 れます(同法17条1項)。
  この取消の申立ては保護命令を申し立てた裁判所にすることになります
 (「保護命令を発した裁判所は・・・」(同法17条1項)参照。)。


 ●参考:
 「保護命令手続について」(裁判所HP)
  http://www.courts.go.jp/saiban/wadai/2306/index.html
  
  本サイト内「ドメスティックバイオレンス(DV)について」
  http://www.hou-nattoku.com/enq/38-domesticviolence.php


  [関連情報]
  ・DV(ドメスティックバイオレンス)被害女性が住める場所は?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/883.php



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第292回 【問題】
───────────────────────────────────

 「未成年者を代理人に任命できる?」

  Aさんは実弟の子である17歳の甥っ子B君を自己の代理人としてバイク
 ショップCで高級バイクを購入しました。
  ところが、後になってAさんは高価な買い物をしたことを悔やみました。
 そこでBさんはCに対して、未成年者Bが親権者である親の同意を得ずに代
 理人として売買契約を締結したのだから、本件契約は取り消すことができ
 ると言いました。
 Bさんの主張通り本件売買契約を取り消すことはできるでしょうか。

 1. できる
 2. できない



 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 裁判員のための一口判例解説
───────────────────────────────────

  第百六回 「放火前の避難提案と故意」
       ~福岡高裁昭和45年5月16日判決~

  狭い道で自動車を運転中、前方に人を発見。
  このまま進んだら、もしかしたら衝突してしまうかもしれない・・・
  このあとどう考えたかによって、結果的に衝突事故が起きた場合に成立
 する犯罪が変わります。
  
 (1)「まさか、衝突することはないだろう」
  犯罪事実が起こると思っていないため、主観は「認識ある過失」です。
  業務上過失傷害罪(刑法211条)が成立します。

 (2)「衝突しても別に構わない」
  犯罪事実の発生を認容しているため、主観は「未必の故意」です。
  故意犯として傷害罪(同204条)が成立し、(1)よりも重い罪になります。
  
 では、犯罪事実を認識しつつも、結果回避措置を講じたという場合の主観
 は、(1)と(2)のどちらなのでしょう?
  
  診療所に勤務していた被告人Xは、昇給の件で所長Aに不満を抱いており、
 その鬱憤を晴らすために同所への放火を決意しました。
  同所には手足の不自由な患者30余名が入院中で、そのうちのB(視力ほ
 とんどなし)とCは老齢で歩行も困難な状態でした。
  Xはこれらの事情を認識していたため、死傷者の発生を防ごうと、放火
 前に入院患者らを屋外へ出そうと試みましたが、患者達はXの意図を察知
 できず、ほとんどの者が出ようとしませんでした。
  ついにXはそのままガソリンをまいて放火し、同所をほぼ全焼させまし
 た。
  その結果、逃げ遅れたBは間もなく焼死、Cは火傷により死亡したほか、
 8名が傷害を負ったのです。
  
  1審は、Xが「診療所に放火してもB以外は自力で避難することができる
 から、Bだけを救出すればよい」という判断のもとに放火したところ、意
 外にも火のまわりが早く、多数の怪我人を出したばかりか、Bの救助もで
 きず焼死させたと認定しました。
  裁判官は、このXの判断が極めて軽率であることの非難は免れ得ないと
 しながらも、XがB・Cをはじめ多数の患者の死傷について予見・認容して
 いたとは考えられないとして、殺人(同199条)と傷害の故意を否定した
 のです。
  これに対し、検察官は未必の故意を、弁護側はXの心神喪失ないし心神
 耗弱を主張して、双方が控訴しました。
  
  福岡高裁は1審判決を破棄しました。
  まず高裁は、Xには「想定の方法で放火すれば身体の不自由な患者らが
 死傷するかもしれない」との明確な認識があり、特に重症患者で放火地点
 の真上の病室にいたBとCについてはそのおそれが強いと認識していたと指
 摘しました。
  そのうえで、Xが避難誘導に失敗したにもかかわらず危険性の高い方法
 (多量のガソリンをまいて点火)で放火している点から、Xは死傷の結果
 の発生を認容していて、殺人と傷害につき「未必の故意」があったと判断
 しました。
  Xに患者らの死傷結果を避けたいという気持ちがあったことは明らかで
 も、放火により不可避的な死傷結果の発生が予見される以上、これに対す
 る特別の防止措置を講じないままに放火したとすれば、死傷の結果につき
 責任を負うのは当然と考えたのです。
 以上より、Xに殺人罪、傷害罪の故意を肯定し、両罪を成立させました。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律用語
───────────────────────────────────

 法律用語 「外交官特権」

  日本国内や日本船舶・航空機内で罪を犯せば、日本の刑法で裁かれるの
 が基本です(属地主義、刑法1条)。
  しかし、外交官にこの属地主義を適用すると、場所によっては赴任国か
 ら不当な抑圧を受け、国家の代表者としての責務を果たせなくなる危険が
 あります。
  こうした事態を防ぐため、外交官に関しては例外的に治外法権を認める
 というのが国際法上のきまりになっています。
  
  たとえば、外交官の身体は不可侵であり、抑留や拘禁が許されないほか
 (外交関係に関するウィーン条約29条)、外交官の住居・書類・財産等に
 対しても手出しはできません(同30条)。
  また、外交官は刑事裁判権のほか、原則的に民事裁判権、行政裁判権も
 免除されています(同31条1項)し、裁判に呼ばれて証言する義務もあり
 ません(同条2項)。
  
 では、外交官は事件を起こしても何のお咎めも受けないのでしょうか?
  
  そんなことはありません。
  赴任国の裁判権から逃れられるとはいっても、派遣国(外交官にとって
 の自国)の裁判権は有効に残っています(同条4項)。
  
  また、外交官特権は一国の代表・外交官という「身分」に認められてい
 るに過ぎないので、刑法に関して言えば、外交官をやめた後は日本の刑法
 の適用対象になります。
  外交官である間は公訴時効(事件発生後一定期間が経つと、裁判所に訴
 えることができなくなるという時効の一種)の時間の針が止められている
 ので、事件後しばらく経過してから来日したとしても、訴追の可能性は残
 されているのです。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第292回 【解答】
───────────────────────────────────

 「未成年者を代理人に任命できる?」

 □解答□

 2. できない

  民法は、代理人は行為能力者であることを要しない(102条)としてい
 ます。
  これは、代理人が行為能力に制限を受けている事について代理した場合
 には、本人は、代理人のした意思表示を代理人の行為能力制限を理由とし
 て取り消すことができない、ということを意味しています。
  行為能力制限(未成年者に対する制限など)を理由とする取消しは、制
 限行為能力者を保護するために認められたものです。しかし、代理の効果
 は制限行為能力者である代理人ではなく本人に生じます。ですので、制限
 行為能力者保護の趣旨はこの場合にはあたらないのです。
  本問で未成年者であるB君は親の同意なくAさんの代理人として代理行為
 を行っています。しかし、B君のした高級バイクの購入という代理行為の
 効果はB君に及ぶことはありません。したがってこのような場合、未成年
 者の法律行為には法定代理人の同意が必要である(民法5条1項)という規
 定は、民法102条があることによって適用されないのです。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 「弁護士・法律事務所データベース」のご案内
───────────────────────────────────

 「弁護士・法律事務所データベース」は全国の弁護士・法律事務所を網羅
 したデータベースサイトです。
 
 http://www.hou-nattoku.com/lawyers/

  名前や性別・事務所所在地・得意分野など、様々な条件を設定して弁護
 士や法律事務所を検索することが可能です。弁護士選びの参考にぜひお役
 立て下さい!
 
 弁護士の皆様の情報登録もお待ちしております。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 法、納得!どっとこむ、モバイルサイトでも情報配信中!
───────────────────────────────────

 「法、納得!どっとこむ」でおなじみの「もし裁判員に選ばれたら?」
 や「裁判員のための刑法入門」を始め、法律相談・法律クイズを携帯サイト
 で配信中!外出先や通勤途中でも「法律」が学べます。

    ⇒ 『法律Q&A』http://homu.tv/q?m=lifrml 
    ⇒  ※携帯電話からのみご利用いただけます。  
       ※3キャリア対応(DoCoMo・au・SoftBank) 



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お知らせ
───────────────────────────────────

 ★皆様のメルマガに対するご意見をお聞かせください。
  どんな些細なことでも結構です。
  また、取り上げて欲しい話題・ご質問などもお待ちしております。
  専用フォームで簡単に送信できます  ▼Click!!
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/

 ★メルマガの相互紹介を募集しています。
  ご希望の方は、お問合わせフォームよりご連絡下さい。
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:NPO法人 リーガルセキュリティ倶楽部
監 修:弁護士 密 克行、弁護士 浅井 健太、弁護士 中西 啓
───────────────────────────────────
法律相談の応募: http://www.hou-nattoku.com/ask/
登 録 ・ 解 除: http://www.hou-nattoku.com/about/magazine.php
バックナンバー: http://www.hou-nattoku.com/mailmag/
ご意見・ご感想: https://www.hou-nattoku.com/opinion/
───────────────────────────────────
関連サイト
リーガルフロンティア21: http://www.lifr21.com/
パラリーガルWEB:http://www.paralegal-web.jp/
法律事務所求人ナビ:http://xn--3kq5dn1lntqcjdhtuj3a.jp/
知って納得!離婚どっとこむ:http://www.nattoku-rikon.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




        

 

ページトップへ