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消費者契約法と企業の対応 (3)

 前回では、消費者保護法制の移り変わりについて見てきました。
 今回は、消費者契約法、とりわけ消費者取消権の創設による法的観点の変化ということを見ていきたいと思います。

4) 消費者契約法の内容

 消費者契約法の内容は、おおまかに言って、二つに分けることができます。

(i) 消費者取消権

 第一は、事業者と消費者の保有する情報格差を解消するべく事業者に一般的な情報開示努力義務を定めるとともに、
契約締結過程において事業者が

  1. 「不実告知」を行ったり
  2. 「断定的判断」を提供したり
  3. 「不利益事実の不告知」を行ったり
  4. 「退去を求められたにも拘わらず退去しなかった」り
  5. 「消費者を退去妨害」した場合には、

商品・役務の種類を問わず一般的に契約の取消をする権利を消費者側に認めました。この取消をする権利を、「消費者取消権」と言います。

(ii) 不当条項の無効

 第二は、事業者の損害賠償条項や商品に欠陥(瑕疵)があった時の瑕疵担保責任などを制限するなどの不公平な条項が定められた場合には、その条項のみについて消費者から無効の主張が出来ることとされました。

5) 消費者取消権の特徴

 上で述べて来ましたように、消費者取消権は、従来のクーリングオフと異なり、商品・役務に絞りが掛けられていないこと、取消権の主張期間が取り消しができることを知ってから半年(又は契約から5年)という長期間であること、及び事業者の責めに帰すべき何らかの理由が必要とされていることを特徴としています。

 このような特徴を持った消費者取消権は、契約自体には何ら問題がないにも拘わらず、契約を締結する過程において事業者の不誠実な行為・不作為に対する責任を問うものです。

 通常の取引においても契約交渉者の間の信義誠実義務について議論されることが多くなってきましたが、消費者契約では、当事者間の情報格差を是正するように行動する義務が事業者に対して課せられたものであり、一般におけるよりも重い契約当事者の信義誠実義務を事業者に課すものと言えるでしょう。

 そして、この主張は、通常の取引におけると同じように契約当事者の誠実義務違反をとがめる、という主張がされることになります。

6) 新たな消費者像

 つまり、そこでは、これまでのように消費者が一方的に行政に保護される対象としてではなく、

  1. 「自らの権利を自ら主張し
    当事者として
    私法的にトラブルを解決していく消費者」

というものが想定されていることになります。これは明らかに従来の保護政策とは異なる考え方です。

 これを事業者サイドから見た場合、消費者保護のために気を使うべきは役所ではなく取引の相手たる消費者そのものに変わったことを意味しています。
 従って、企業における消費者保護の対応も、その点に注力していくことが肝要になると言えるでしょう。この点は後述しますが、考え方のポイントはまさにこの点にあると言えます。


 次回は、この消費者取消権に対する企業の対応方法を述べる前に、この消費者取消権の概念を良く理解するために、「契約過程」における契約当事者の役割、義務、契約当事者の「信義誠実義務」についての民法の規制を見ていきたいと思います。

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