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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第592号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2011年 9月12日                        第592号
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 発行部数: 20,099部(まぐまぐ 14,594部、melma! 5,505部)
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■ 目 次
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  □ 隔週連載:世界の離婚 第9回
    「フランス編」

  □ なっとく! 法律相談 第580回
    「請負契約でも夜間手当がもらえる!?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1059.php

  □ 法律クイズ 第266回 【問題】
    「労働基準法が適用されない職業がある?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0543.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第八十回 「被相続人の殺害と2項強盗罪」

  □ 法律用語 「中間確認の訴え」

  □ 法律クイズ 第266回 【解答】



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■ 隔週連載:世界の離婚 第9回
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 「フランス編」


 「世界の離婚」、第9回目の今回はフランス編です。

 ◯婚姻

  婚姻年齢は男性18歳、女性15歳とされていますが、未成年者(18歳未満)
 の場合は、父母等の同意が必要です。
  近親婚については、直系血族、直系姻族、兄弟姉妹、おじおばとの婚姻
 は禁止されています。
  また、再婚禁止期間が置かれており、女性は前婚解消後、300日以内は再
 婚できません。もっとも、(1)女性が出産した場合や(2)医師による妊娠し
 ていないことの証明書を提出した場合、(3)前夫が300日以来その妻と同居
 していなかったことが明らかなときは、300日を待たずして再婚できるとさ
 れており、日本よりは緩やかな規制となっています。
  
  手続面では、まず婚姻の挙式前に市町村庁舎の門戸に告示がなされます。
 告示の内容は、夫婦となる者の氏名、職業、住所などで、10日間掲示され
 ます。さらに、2カ月以内の日付を有する医師の健康診断の証明書がなけれ
 ば、告示自体ができないことになっています。
  告示期間が経過すると、夫婦となる者の住所の市町村の身分吏の面前に
 おいて、公開で挙式が行われます。
  
  
 ◯離婚

  フランスにおいては、複数の離婚方法が認められています。
 
  第一は、夫婦双方が離婚に同意している場合で、夫婦共同で離婚を申し
 立てる(1)同意離婚です。日本の協議離婚と似ていますが、裁判所の関与が
 必要な点が異なります。また、婚姻成立後6カ月を経過しないと申し立てが
 できません。
  同意離婚の場合、裁判官は同意が真意かつ自由になされたとの心証を得
 た場合は、離婚を言い渡します。なお、同意離婚には熟慮期間が設けられ
 ており、夫婦は最初の請求から3カ月後に請求の更新をしなければならない
 とされています。つまり、3カ月間継続して離婚の意思があるかどうかを確
 認するわけです。
 
  第二は、(2)認諾離婚です。これは、夫婦の一方から共同生活の維持を耐
 えがたくする事柄を摘示して請求された離婚に対して、もう一方が裁判官
 の面前で認めた場合に、離婚を認めるやり方です。
 
  第三は、(3)破綻離婚です。6年前から事実上別居している場合に認めら
 れます。
  第四は、(4)精神病離婚です。これは、一方配偶者の精神的能力が6年前
 から著しく減退し、夫婦間にいかなる共同生活も存在せず、かつ、将来も
 回復する見込みがないときに認められます。ただし、離婚が配偶者の疾病
 に極めて重大な結果をもたらすおそれがある場合は、裁判官は離婚の請求
 を職権で排斥することができるとされています。
 
  第五は、(5)有責離婚です。夫婦の一方が婚姻の義務について、重大な違
 反、もしくは反復して違反し、共同生活の維持を耐えがたくしたときに請
 求できます。
 
  最後は(6)重罪判決による離婚です。殺人や強姦など懲役10年以上が予定
 されている重罪判決を受けた場合、離婚が認められます。
 
  上記とは別に、法的別居の制度が設けられており、別居が3年継続した場
 合や当事者の共同の請求により、離婚に転換することができます。
 
  親権については、離婚後も父母の親権が存続するとされています。この
 ため、面接交渉権も当然の権利として認められ、子供と同居する親が住居
 を変更する場合は、変更後の居住地を、他方の親に告知することが義務付
 けられています。住居変更について折り合いがつかない場合は、裁判所が
 調整を行うことになります。
  また、一方の親が他方の親に無断で子供を連れ去る行為は、それが平穏
 になされたとしても、他の親の親権行使を侵害する犯罪であるとみなされ、
 処罰の対象となります。
 
 次回はドイツ編をお送りします。



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■ なっとく!法律相談 第580回
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 「請負契約でも夜間手当がもらえる!?」

 □相談□

  主人は溶接の一人親方として、ある鉄工所で仕事を請け負い、鉄工所内
 で仕事をしています。始めの3ヶ月ほどは8時~17時までで時給1700円でし
 たが、その後は夜勤になり19時~4時で時給は昼間と同じ1700円です。会社
 側と話したら、嫌なら辞めて貰うと言われたそうです。社員でなくて、請
 負だと、深夜手当は付かないものでしょうか?
  時給を深夜分、上げてほしいのですが、応じて貰えません。良い方法は
 ありますか?

                          (50歳以上:女性)


 □回答□

  労働基準法(労基法)37条4項は、使用者が労働者に午後10時から翌午前
 5時まで労働させた場合は、通常の時給に25%の割増賃金を上乗せして支払
 わなければならないと定めています。
  そして、労働基準法の適用対象となる「労働者」とは、職業の種類を問
 わず、事業又は事務所に「使用される」者で、賃金を支払われる者をいい
 ます(労基法9条)。
  「使用される」とは、雇用契約かどうかといった契約の形態や、契約期
 間・時間の長短ではなく、実質的に使用者と使用従属関係にあるか否かに
 よって決定されます。そのため、「委任」「請負」等の契約形式が取られ
 ていても、実質的に使用従属関係があれば「労働者」に該当します。
  使用従属関係は、「指揮監督関係の有無」及び「報酬の労務代償性」に
 よって決まります。具体的には、(1)仕事の依頼に対する諾否の自由の有
 無、(2)業務遂行上の指揮監督の有無、(3)拘束の程度、(4)代替性の
 有無(以上が指揮監督関係の有無に関する事項です。)及び(5)報酬の性
 格によって決まります。

  各判断要素に関しては以下のように考えます。
 (1)仕事の依頼に対する諾否の自由の有無があれば、対等な当事者とし
 て指揮監督関係が否定されます。(2)業務遂行上、その内容や方法につい
 て具体的な指示を受けている場合には指揮監督関係が肯定されやすくなり
 ます。(3)勤務場所や勤務時間が指定され、管理されていることは指揮監
 督関係を肯定する要素です。(4)本人の意思で他の者に労務を提供させる
 ことが認められている場合(請負の場合であれば下請けが認められている
 場合)ことは指揮監督関係が否定される要素の一つです。(5)報酬の性格
 が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価
 と判断される場合には、使用・従属関係を補強することになります。

  ご主人の場合、勤務場所及び勤務時間が指定されていることから(3)の
 基準を満たしており、時給制が採られていることから(5)の基準も満たさ
 れています。また、会社側の「嫌なら辞めてもらう」という発言から、(1)
 仕事の依頼に対する諾否の自由がないであろうことも伺えます。これらの
 事情から、ご主人は労基法上の「労働者」に該当する可能性は高いといえ
 ます。ただ、労働者性の判断は上記基準を総合的に考慮して判断されるも
 のですので、このことのみをもって、ご主人が労基法上の「労働者」に該
 当するとはいえません。
  ですので、一度上記基準、とりわけ残りの(2)及び(4)を参考に会社
 とご主人の間に「実質的に使用者と使用・従属関係」があるか否かを検討
 してみてください。また、労働基準監督署に相談するのもいいかもしれま
 せん。

  そのうえで、労基法9条の「労働者」にあたるのではないかと判断された
 場合には、当該会社は本来支払うべき夜間割増賃金を支払っていないので、
 労働基準監督署に通報するとともに会社側に未払い分を請求されるとよい
 でしょう。

 「厚生労働省HP・全国労働基準監督署の所在案内」
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/location.html

 なお、賃金請求権は2年で時効消滅するので(労基法115条)気を付けてく
 ださい。
 
 
  [関連情報]
  ・休日労働
   http://www.hou-nattoku.com/shokuba/jikan6.php	



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■ 法律クイズ 第266回 【問題】
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 「労働基準法が適用されない職業がある?」

 以下のうち労働基準法が適用されないのは誰でしょうか?

 1. 家事一般のために使用されている者
 2. 必要な営業許可を受けずに営業している会社に雇用されている者
 3. 非営利団体に雇用されている者


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 裁判員のための一口判例解説
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  第八十回 「被相続人の殺害と2項強盗罪」
        ~東京高裁平成元年2月27日判決~

  強盗罪(刑法236条)とは、暴行や脅迫によって他人の財物(お金など)
 を強引に奪う行為をいいます。
  奪ったものが厳密には財物でなくとも、財産に関する利益を得たのであ
 れば、実際は財物を奪ったのと同じようなものですよね。
  そこで、同条2項は、暴行・脅迫によって財産上の利益を得た場合を「強
 盗利得罪(通称・2項強盗罪)」として規定し、強盗罪の一形態として罰す
 ることにしています。

  今回の事案では、「相続人の地位」がこの「財産上の利益」といえるか
 が争われました。
  
  被告人Xは、Yと共謀して、Yの両親A・Bを殺害し、唯一の相続人で
 あるYに全財産を相続させて財産上の不法の利益を得ようと企てたうえ、
 第三者による強盗と見せかけるため、現場にある現金をも強取しようとし
 ていました。
  そしてA・B方に侵入し、就寝中の両名にカッターナイフで切りつけま
 したが、激しい抵抗にあい、目的を遂げませんでした。
  
  1審は、相続による財産の継承は「財産上の利益」に当たるとして、Xに
 2項強盗殺人未遂罪の成立を認めました(同236条2項、240条、243条)。
 X側は、この「財産上の利益である」という判断を不服として控訴します。
  
  東京高裁は、2項強盗罪の成立を否定し、本件を破棄差戻しました。
  
  その理由として、まず、暴行・脅迫を使って被害者の反抗をおさえ、無
 理矢理財産上の利益を得るという2項強盗罪の性質こそが、普通の強盗罪の
 「財物の強取」に匹敵するものであって、両者を同様に処罰する根拠であ
 るという点を指摘しました。
  したがって、2項強盗罪の対象となる「財産上の利益」は、普通の強盗罪
 の「財物」と同じく、本来、被害者が任意に処分できるものでなければな
 らないとしました。
  そのうえで、相続開始による財産の承継は、生前の意志に基づく遺贈な
 どと違い、人の死亡によってしか生じないものだから、もともと任意に相
 続を開始することはできず、処分の余地がないため、「財産上の利益」で
 はないと考えました。
  
  以上より、本件のような場合は、強盗殺人罪ではなく、単純な殺人罪(同
 199条)に絡めて論じるべきで、Xの意図は極めて悪質な動機として情状面
 で考慮すれば足りるとしたのです。



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■ 法律用語
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 法律用語 「中間確認の訴え」


 「中間確認の訴え」ってあまり聞かない言葉ですが、どんな訴訟をいうの
 でしょう。
 
  中間確認の訴えとは、民事訴訟の当事者が、もともと訴訟の題材となっ
 ている問題Aに絡んだ法律関係Bの存否を、その訴訟手続き(Aの裁判)内で
 確認したいと求める訴訟を言います。
 
  たとえば、甲が、「建物を撤去し、土地を明け渡せ」と乙を訴えている
 としましょう。
  この「建物を撤去し、土地を明け渡せ」というのがもともとの揉め事(A)
 ですが、これを認めるべきか考える際に「土地所有権が甲と乙のどちらに
 あるのか」という法律関係(B)を明らかにする必要がありますね。
  (B)がはっきりしていれば話は簡単なのですが、この(B)についても
 両者が争っている場合、(A)の訴訟手続の中で(B)の法律関係を確認す
 るための訴訟を提起します。これが中間確認の訴えです(民事訴訟法145条)。
  
 (A)の結論が出れば(B)の法律関係も自ずと明らかになるのに、なぜ
 わざわざこれを訴訟にまでする必要があるのか疑問に思われるでしょうが、
 これには民事訴訟判決の持つ効力の限界が関係しています。
  民事訴訟では、(A)判決の結論については「既判力(もうすでに判断し、
 結論が出た問題だから再び同じ問題で争うことは許されないという効力)」
 が生じて保護されるのですが、その過程で下された(B)の判断については、
 (A)の判決理由中で示されるだけでは既判力が生じないとされています
 (同114条1項)。
  そのため、別の訴訟で再度(B)に関して争うことも可能だということに
 なります。
  こうした事態を防ぐため、(B)を中間確認の訴えでひとつの訴訟として
 扱い、その結論についても既判力で確定させるのです。
  
  少し面倒ですが、争いを長引かせないために中間訴訟で念を押しておく
 のもいいかもしれません。



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■ 法律クイズ 第266回 【解答】
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 「労働基準法が適用されない職業がある?」

 □解答□

 1. 家事一般のために使用されている者

  労働基準法では、事業の種類を問わず、労働者を一人でも使用する場合
 には、同法が適用されるとしています。
  もっとも、同法の適用対象となる事業にあたる場合でも、同居の親族の
 みを使用する事業及び家事使用人には同法の適用は除外されています
 (116条2項)。
  ですので、(1)の者には労働基準法は適用されません。
  なお、(2)の無許可営業であっても、労働者保護の必要性が認められる
 限り、労働基準法は適用されます。
 また、労働基準法の適用は、営利事業に限定されません。



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